2020年9月4日掲載 ITトレンド全般 ICR研究員の眼

幻のMWC2020、変わる世界の通信業界(3)5Gサプライチェーンへの影響



新型コロナウイルス感染対策のため、開催中止となった「MWC2020」をネタに行った鼎談の第3回目。

<出席者プロフィール>

クロサカタツヤ 氏
株式会社企 代表取締役、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授
通信・放送セクターでの経営戦略、事業開発を中心としたコンサルティング、官公庁プロジェクトの支援等、幅広く手掛ける他、総務省等の政府委員を務める。
近著『5Gでビジネスはどう変わるのか』(2019年)

堀越 功 氏
日経BP 日経クロステック 先端技術 副編集長 
メディアの立場から、世界の情報通信を世の中に伝え続けてきた、屈指の存在。
日経クロステック(オンラインメディア)「堀越功の次世代通信羅針盤」にて最新動向を連載中。

岸田重行
株式会社情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 上席主任研究員
情報通信に特化したリサーチ・コンサルティングの立場から、長く世界のモバイル通信を中心にフォロー。MWCには、1998年より(その前身「GSM World Congress」に)参加。講演、寄稿、出演等多数。 (研究員紹介)

 

「幻のMWC2020、変わる世界の通信業界(2)」のつづき。

6. 5G、サプライチェーンへの影響

クロサカあと、ホントにMWCそのものだけじゃなくて、コロナウィルスの影響がこの5Gを含めたモバイル産業全体に与えるネガティブな影響の分析とか、それをディスカッションする場所は、まあ、今からでも遅くないかも知れないので、GSMAはやるべきだと僕は思うんですよね。

堀越うん。

クロサカで、例えば、リリース16が遅れそうだっていう事もそうだし、あの『武漢ファイバーバレー』がいったいどうなってしまうんだろうとかも。

堀越そうそう、そうですねえ。武漢は光ファイバーの一大集積地ですよね。

岸田光の本拠地ですからねえ。

クロサカあれがどうなってしまうの?っていう事もそうだし、まああと、単純に経済のモメンタムとしても1回冷えるわけですよね。

岸田そうですねぇ。

クロサカで、このタイミングでiPhoneが5G対応って言ったって誰が買うんだよという話だとか、まあ他のメーカーさんも勿論そうですけれども、日本の通信料金の引き下げの話が『冷や水』だとすると、今回はもう『南極から氷が降ってきました』みたいな状態。

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(左)と、 日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(中)、 ICR 上席主任研究員 岸田重行(右)

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(左)、
日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(中)、
ICR 上席主任研究員 岸田重行(右)

 

堀越コロナウィルスによる通建会社への影響を調べたんですけど、給電ケーブルやアンテナ部材、基地局中のプリント基板などが、中国サプライチェーンに乗っかっていて、1、2か月遅れるかもという話がありました。

岸田入って来ないっていう話ですよね?

堀越そうですね、で、2019年度中の基地局っていうのは、キャリア各社はもう在庫で仕入れているんで、5Gのローンチは問題ないけども、まあ5月6月過ぎると、かなり危ないっていう話が現時点で出ていますね。

岸田工事が進まないっていうのは…

クロサカそうなんですよね。まあ良いのか悪いのか、6月に入るとオリパラの影響で工事が一度止まるんで。日本的には良いのかも知れないんですけど、『そもそもオリパラやるのか問題』っていう事もありまして(註:対談後に2021年夏への延期が決まりました)。

岸田いやぁでも何か。今のウィルスの話は、これまで『ウィルス』ってサイバーの話だったのに、いきなりその…サイバーフィジカル・システムとか言っているところで、

クロサカそう、そう。

岸田Society5.0みたいな話で「サイバーフィジカルだ」って言っている時に、フィジカルがいきなりこんなアウトじゃねーか、みたいな。サイバーセキュリティどころの騒ぎじゃないでしょ?っていう。

クロサカフィジカル弱いなぁって話ですよね。

岸田サイバーが強い。

クロサカそう。それが凄いんだよなぁ。

堀越国レベルで言うと中国のサプライチェーンは外すことが出来ないので、

岸田出来ないですよね。

堀越もう、エリクソン、ノキア含めて影響が出ていますね。

岸田だから、結局、サプライチェーンがあって、その次のバリューチェーンみたいな話にも繋がっていく話で言うと、やっぱり上流で止まっちゃったんで、いやそこは、水止めるのはマズいでしょ?みたいな。お水が流れて来ないんで、干上がっちゃうんですよね、あんまり時間が経つと。

堀越昨年1年間は、アメリカの『ファーウェイ排除問題』が騒がせましたけど、それ以上にやっぱこう、コロナの問題っていうのは直接影響受け始めているなあっていうのが実感している事ですね。

岸田そのファーウェイを含めてその中国ベンダー云々って言うアメリカの政治的云々って言う話はもう、誰もが知っている話ですけど、

堀越うん。

岸田そういう風な話もありながら、でも、このMWCっていうイベント自体は、元々がヨーロッパ系のイベントであって、ある意味アメリカのイベントには全くなっていない訳ですよね。で、ヨーロッパのイベントに最初アメリカが入っていったっていう意味で言うとまあ、クアルコムがもと北米方式で、「これから仲間に入れて」と2007年くらいに言って入って、その後、アジア系で韓国系・中国系どんどん、機器ベンダーも端末ベンダーも入っていって。そういう所で言うと、まあモバイル業界という切り口では、やっぱりヨーロッパ主導でアジアがくっ付いていって、まあ日本は2000年の3Gのタイミングから早めに入ったんであれでしたけど、アメリカはそこに乗ってなかった。

堀越ずっと乗ってなかった。だからかつてのグーグルのエリック・シュミットさんがキーノートでブーイング受けたとか、フェイスブックのザッカーバーグが登壇したら『何しに来たんだ』的な雰囲気があった。

岸田OTTプレーヤー云々っていうのも、アメリカ対ヨーロッパみたいな構図も反映しているし、で、それは、トランプ大統領の中国は云々っていう話、は、アメリカ対中国っていうのが反映されているし、そういうマクロな構図が、ずっとこういう所にも効いているわけですけど、それで言うと、このヨーロッパ、アジアが、主にアメリカ以外の人達が主役の、このイベントが1回止まっちゃった事で、そのマクロな話、バリューチェーンでいうとアメリカも含めて、ずーっと繋がってしまっているので、『誰がどうの』っていうレベルを超えちゃって、「え?こんなに簡単に色々止まっちゃうんですか?」みたいなのを目の当たりにさせられているという。

クロサカうーん。

堀越うん、ホント、コロナの影響って凄いなあって、実感しますよね。

岸田人が動かなくなる?動けなくなると、あっさりこんなんなるんだなっていう事ですよね。

堀越あのトランプがあれだけ言ったって、欧州は4Gであれだけファーウェイ入ってしまっていると、もう排除は事実上難しい訳ですよ。ファーウェイがこの間のウェブ・カンファレンスで言っていましたが、90以上のコントラクトを取っている。それは明白なんですよね。もはや4Gのシェアでもう決まってしまっているようなもんですよね。

岸田いや、素直にその特にまあヨーロッパとかアジアとか、今5Gをどんどんやりましょうと言っているキャリアさんがいるエリアは、米、中、韓なんですよね。で、そこ以外は「まあ入れなきゃね。」って思いながら、入れるお金が無いか、つもりが無いかです、と。でヨーロッパみたいに欧州委員会が旗振りしても、キャリアは乗らずみたいなところもあって。で言うと、やっぱりここのエコシステムが止まっちゃうというのは、グローバルなシステムに広げていく上では、やっぱり…どこかで加速して、本来行くはずのペースに戻るのか?って言うと…。

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(左)と、 日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(右)

クロサカタツヤ 氏(左)、堀越 功 氏(右)

 

クロサカキツイ。

岸田期待出来ないなぁという感じがしますよね。それは。結果的にどうなのか?というのは、正直プラスもマイナスもある気がして、よく分からないですけど、少なくとも、2020年代はこうですかねぇ?というロードマップのイメージは、後ろにずれる気が、

堀越うん。

岸田するし…何かこう、広がっていく5Gみたいな話が1回、息継ぎさせられちゃった事は、まだまだ自分等が感じてない事で影響出るんじゃないかなっていう気もしますけどね。

クロサカ少なくともこれを話している2月27日現在では終息の状況が見えないので、もう本当に、良いと悪いと両方を進めるよう振らせるしかないんですよね。

岸田まあ、やっぱり『スピード感』が、すごく他の業界より圧倒的に速いというのが、この情報通信の業界。で、それは、まあ今後も『サイバーフィジカル』みたいな話を牽引する側の業界でもあるし、「5Gはその全ての産業を支えます。」っていう事を、これは言ってきたし、多分、出来るはずの業界だと思う。

堀越ええ。

岸田と、1回急ブレーキ掛かってもう1回リスタートぐらいのスピード感をもう1回出せるか?っていうのを、多分試されるんでしょうねぇ。

7. 5Gに必要なトラスト

堀越うん、うん。それがMWC上海で言えるかとか、ロサンゼルスで出来るかって言うと、多分、バルセロナと全く性格が違うと思うんです。

岸田バルセロナはグローバルイベントですよ。上海、LAはローカルイベントですよ、やっぱりこれは。

クロサカうん。

堀越あともう1つ今回、ギャップが開いて手痛いなあと個人的に思っているのが、業界全体で通信インダストリーがもっとこう、信頼、トラストを得ないといけない時期じゃないかと、個人的には思っています。クロサカさんも著書(『5Gでビジネスはどう変わるのか』)で書いておられましたし、最近アクセンチュアとかエデルマンとかもレポートを出していましたけど、テック業界に対する信頼度というのが、どんどん下がっているっていうのがあります。危機意識として訴えていまして、正に、通信業界も一緒だなあと思っていまして、特に5Gになって色んな産業インフラがあるとすると、より信頼性を高めないといけないのに、今の段階だと逆風が吹いているような気もするんですよね。

堀越 功 氏

クロサカそうなんですよねえ。

堀越その為に一致団結して、バルセロナのような場でそういうメッセージが出てきたらよかったと思っていました。

岸田そうですねぇ。

堀越皆で「まあ、そうだよね、」「こっちへ向かおうよ!」っていうのをもう1回再確認するっていうのが多分、今回無くなっちゃったんじゃないかなという、気がしているんです。

岸田確かにそうですねぇ、バルセロナって何かこう、業界の一致団結する凄く良いイベントなんですよねえ。

クロサカあの、エンドコンシューマーというか、人間、ユーザー側の心理という意味の『トラスト』と、産業論としての、産業基盤として皆を支えるという意味の『トラスト』と、多分両方そこは担わされているのが、正しく『モバイル』なのだろうと。さらにいえば、もはや『モバイル』というカテゴリーもおかしい位、テレコム全体での責任ですよね。

堀越うん。

クロサカテレコムの今置かれている状況だと思っていて、特に後者の産業論の話で言うと、あらゆるテクノロジーというかあらゆるサービスが、通信を前提としてロードマップを描き始めている訳じゃないですか。車なんかが顕著ですけれども。

岸田そうですね。

クロサカで、そこも地層が岩盤で「揺るがないんだよね?」っていう風に皆が思っていた所が「あ、揺らぐんだあ。」ってみたいなのが、多分今起きつつ、本当にそれがもう割り切ってしまったのかどうか分からない。ヒビが入っちゃったか分からないんですけれど、でも、「入りかねない状況だよね?」っていう事は皆分かっている。

岸田そうですねぇ…。

クロサカで、一方で「サイクルが速い」っていう風に、先程岸田さん仰ってましたけれども、サイクルの速さを正当化するのは、やっぱりエンドユーザーからの『信頼』なんですね。

堀越『信頼』ですね、うん。

クロサカサブスクリプションというお金を払ってもらっているからこそ、お金が回っている訳で、そのスピードって結局、陳腐化を恐れずに、新しいテクノロジーとか新しい機器を導入していく事じゃないですか。

堀越うん。

クロサカで、それはお金が無いと出来ない事だから、「お金は誰から頂くの?」って言ったら「ユーザーから頂いています。」っていう構造があって、この産業は大きく成長した訳ですよね?でも。そこが、元々ちょっと『危うい』所がある。「ロードマップさえちゃんと描けないのか?」って話とか、まあ今回のバルセロナでそれが見えてしまうんだとすると、ユーザーの一番合理的な選択は「じゃあ4G使う?」なんですよ。

堀越そう。

クロサカ「4Gで結構です」と言う。4Gは当然、市場圧力として、費用は低減させていかなきゃいけないし、していくので、ユーザーも「4Gしか使わないんだから、自分の払うお金は低減していくんだよね?」ということを言うんだと思うんですよ。

岸田右肩上がりのエコシステムにならなくなるんですよね?

クロサカはい。

岸田踊り場ならまだ良い位の感じで。

堀越うーん。後ろ向いちゃうかも知れませんね…。

クロサカで、ただでさえ今回のコロナの件が無かったとしても、「5Gの投資って難しいよね?」っていう話が…。

岸田元々ありますからね。

クロサカ世界中あった訳じゃないですか。でそれが、こう難しい以上のハードルを課せられてしまうと、さてどうしよう、っていうのが悩みの種ですね。

8. 5G投資を支えるもの

岸田うん…。あの、投資とか世代とかの話で、自分が思っている事で言うと、いくつか基軸はあるんですけど、1つは通信、特にモバイルですけど、結構、ラッキーが多かったと思っていて。その次の世代、次の世代っていう技術開発をやって、ある意味マイグレさせていく訳ですから、お金も掛かると。また時間も掛かると。

堀越ええ。

岸田そこで増収が望めないんだったら厳しい訳ですよね。で、第2世代から第3代の頃は、世界的にまあ普及率がまだまだこれからだから、と先が見えていた訳で、そこはあんまり不安が無かったんでしょう。失速をしたのは、周波数オークションにお金を払いすぎたヨーロッパだけで、

堀越ええ。

岸田アメリカはオークションにお金払いましたけど、規模があって耐えてしまいました、と。

クロサカうん。

岸田で、まあオークションとかやってこなかった、もしくは緩かったアジア勢、そこでは淡々と普及して、各社元気にやっています、という。

クロサカうん。

岸田で、3GからLTEに来る時には、まあその手前で、フィーチャーフォンで通信機能が何処まで必要なの?っていうのがありながら、その時には、スマホの普及と歩調が一緒になったので、

堀越うん。

岸田もっと言うと、スマホにLTEを合わせていったので、通信事業者がLTEを入れる理由は、スマホが牽引してくれたんですよね。アップルのお陰で、世界の通信事業者が生きているんですよ。シンプルに言うとジョブズのお陰です、と。

クロサカあともう1つ、ソフトバンクが作ったビジネスモデルのお陰です、みたいな、ははは。(端末価格と通信料金の)カップリングですよね。

岸田でももう1個言うと、ドコモの山田社長の時に、パケット定額料金から従量料金にしたこと。

クロサカそうですね。これは大きいですねぇー。

岸田結局世界が皆、真似しましたからね。7GB縛りで、どんどんまだ右肩上がりますよ、という、その昔の、その何だろう、iモードの頃のパケ死の影響で定額になっていたものを、もう1回従量にしたというエコシステムの作り直しは、これは、日本が世界に先駆けてやった料金プラン。あんまり世の中では言われないんだけど、自分はあれが凄かったなと思うんです。ドコモの料金の作り方が、素晴らしかった。

堀越うん。

岸田で、皆があんまりにもアプリを使ったり動画見るもんだから、3Gネットワークはいっぱいいっぱいになっただけど、でもそれは、お客さん側が「それでも使いたい」となった訳で、LTE投資は完全に正当化された訳ですよね。借金してもネットワークを作っていくという事に金融がお金を出した、と。

クロサカタツヤ 氏

クロサカむしろ品質の悪いLTEネットワークに対してユーザーはブーイングしましたからね。「もっと良いもの作れ。」っていう。

岸田なので、ニーズが投資をこう牽引していった。ニーズ先行で行ったのが第4世代だと思うんですよね、で、第5世代がやっぱり難しいのは、ニーズ先行じゃない点。ニーズ先行にしたいんでしょうけど、まだニーズが立ち上がっていてくれないという所が凄く辛くって、で、ある意味、スマートフォン的な何かなのか、フェイスブック、グーグルみたいなものなのかも分からないですけど、そのニーズを広げる物がどっかでポンッとあったら、5Gの明日って一気に全部正当化されるんですよ、5G投資は。

クロサカうん。

岸田ただ、でも実は、MWCに来ているメインプレーヤーの人は、ほぼ誰一人それを作れた事がない。

堀越そうそう。

岸田作りに行ってはいるんですよ。日本はiモードが上手くいったけど、ヨーロッパもiモードと同じタイミングで『WAP』っていうのがあって、ヨーロッパでもやろうとしたんですけど失敗したんですよね。このMWCの面々は皆、失敗したんです。当時まだ中国勢いなかったですけど。iモードの、えーっと…Nの503かな?カラーでしたから。それを、カンヌのGSMコングレス会場に持って行ったら「ファンタスティック!」って言われました。

堀越ふふふふ。

岸田まず画面がカラー、っていうだけでファンタスティックでしょ?折り畳みはまあ元からあったんで、あれですけど、そこで、まあ当時は日本の端末は海外ではネットワーク繋がらないんで、いっぱい今で言うスクショを持っていく訳ですけども、「こんなコンテンツ、携帯で見られるのか!?」「日本凄いな!」みたいな。

クロサカうん、うん。

岸田MWCの業界自体がそのニーズ開拓しようとしていて、ターゲットは間違っていなかった。でも色んなハードルがあったりして、上手く行かなかった。

堀越うん。

岸田日本はiモードで見つけて、まあこれはキャリアが仕掛けてというのが上手く行った訳です。4Gは、PCインターネットからモバイルにということでスマホでしたよね。

クロサカうん。

岸田グーグル、フェイスブックみたいなOTTと言われた人が今、こういう『プラットフォーマー』になって。なので5Gの課題でいうと、1個1個のソリューションの展開も勿論大事だし、それは確実にニーズとしてあるんでしょうけど、爆発的な、何かこう、転換点みたいな感じに、あんまりならないじゃないですか?

かつてのMWC会場、各スマートフォンメーカーブースに置かれたAndroid人形

かつてのMWC会場、各スマートフォンメーカーブースに置かれたAndroid人形

 

クロサカうーん。

岸田「LTEでも、まあある程度出来るし、Wi-Fiでも出来るんだけど、うーん、ちょっと足らないんだよね…。」っていうところに、みたいな話が今のローカル5Gの議論でもあるので、

堀越うーん、そうそうそう。

岸田だから、ローカルなニーズっていうのは全然いいと思うんです。

堀越うん。

岸田ただ、『5Gのニーズが?』って言う話になると、途端に話が・・・自分なんかも、5Gの話はいっぱい聞かれますし、お話もさせて頂くし、思っている事はお伝えするんですけど、本気で「じゃあ自分の財布からガッツリお金使うのか?」っていう場面になった時に、皆が皆喜んで使うっていう感じにはやっぱりまだなっていない、というのが今だと思いますよね。

堀越正にこの間も『5Gの最大のライバルは4G』という記事を書いたばかりなんですけど。そういう感じですよね?でも現実解としては、4Gをキャッシュカウにして、5Gの『ならでは』のユースケースを耕して、それを『ロングジャーニー』っていうのが、まあここ数年の、業界的なコンセンサスかなぁと。

岸田『ロングジャーニー』ってのバルセロナで、3年前?

堀越はい、結構聞きましたよね。

岸田だからあの『ロングジャーニー』というのは、帰って来てから、色々セミナーとかやらせて頂く時に、「こういう言い方がされています。」とよくご紹介しましたけど、まあ、『ロングジャーニー』だと思ったらまだまだ最初のステージだろうっていうのはあるんですよね。

クロサカいやあ、でも、そう考えると、やっぱりエコシステムというか、お金、投資を含めたお金が回るサイクルを、1から、じゃないな0から考えないと、駄目なのかどうなのかっていう。

岸田そういう『課題感』を突き付けられていますかね。

9. 5Gニーズと社会課題、ローカル5G

クロサカ仮に「根本から考え直せ」という事だとすると、「4Gをキャッシュカウにして、5Gはロングジャーニーだ」っていうシナリオは一応ご破算にしなきゃいけないかなという気がちょっとするんです。何を言いたいかと言うと、『これ』をいきなり打ち込んで行くとちょっと際どい話に過ぎるので、降ろすかもしれませんが。

堀越あははは。

クロサカ「やっぱりそうなると公共投資かな?」っていう気になっちゃうんですよね。正直、5Gは。ニーズ先行でニーズドリブンでのエコシステムが作れないんだとすると。

クロサカタツヤ 氏(左)、堀越 功 氏(左)

堀越うーん。

クロサカまあ、拙著を無理やり我田引水してしまうんですけど、5Gの本領は社会課題解決で発揮されるんだと思うんです。5Gを『この方法なら解決出来ますよ』と仕立てて、『発生し得る社会課題』に対して当てに行かなきゃいけないということだと思うんですよね。で、その当てに行く所は、実はビジネスモデル込みの話なので。

堀越うん。

クロサカビジネスモデルって言うのはさっき、『ユーザーがストレートな受益者負担として対価を払う事が成立しないビジネスモデル』である可能性がある訳ですよ。社会課題って大体そういうものじゃないですか?「自分で金払って解決出来るなら、そりゃ払うわ。」っていう。

堀越うん。

岸田商売になっていますからね。商売にならないから誰も手を出さないっていう。

クロサカそうなんです。でそこは、例えば社会保険みたいな考え方で言うと、三角形とか四角形とかよく言いますけど、プレーヤーが、3者、4者、5者位いて、

堀越ああ、はい。

クロサカその人達の中でぐるぐる回る事で、何とか『維持出来ている。』っていう状態ですよね?でその3者とか、4者の、つまり相対する2者以外の所に、まあ例えば行政だとか、政府だとか、まあ存在する事が、『良い事』でもあるし『課題』でもある訳ですよね。

堀越うん。

クロサカそれと同じ様なメカニズムをやっぱり5Gに関しては作らなきゃいけないのかなぁ…という、つまりユニバーサルサービスの話に近づいて来るのです。

堀越つまりイニシャル投資して、まあ公設民営的なものもありますよね?

クロサカはい。

岸田あのー、今クロサカさんが言われている話は、自分がずっと、何かローカル5Gの話で、色々セミナーとかやらして貰う時に、入れる話の1つと被っていて、

クロサカうん。

岸田その…ずっと5Gの話、ローカル5Gについては別に何でも良いんですよ。どこを使っても良いんですけど、5G自体が割と、まあ4Gと違うんだっていうのを色濃く出す上でも、『社会課題』っていうのは出してきてたと思うんですけど、ソリューション側という事で。まあソリューションっていうのは課題解決なので、その課題が企業の課題なのか、社会の課題なのかみたいな、そういう主体だけの違いだと思うんですけど、企業は自分のコストの中でやるんだったら別に良い訳だし。

クロサカうん。

岸田で、社会課題の方は、『税金で回らんから』の話、のとこに突っ込んでいくという話なんですけど、結局自治体Wi-Fiと一緒で、お金はやっぱ回りにくい社会課題。なので、ローカル5Gで自治体に、という話の課題感の1つは、やっぱり「導入」は良い、と。補助金でも付くんでしょ?と。

堀越うーん。

岸田回す時に、ちゃんとそのランニングが…

クロサカそうなんです。

岸田出せるんですか?というモデルが、まだ多分作れないので、それが作れないと、ローカル5Gは、ほったらかしの設備になって駄目になっちゃう懸念があります、と。

堀越うーん。

岸田でそれはもう、多分自治体さんなんかも、Wi-Fiの時に、身に染みて分かっておられると思えば、「なにが違うの?」っていう話が、技術的な話だけじゃなくて、エコシステムの話でも、ある訳ですよね?で、そこまで作らないとってなると、かなり5Gは、そのやっぱ‘そういう所だけが駄目’って言うと言い過ぎですけど、

堀越うん。

岸田そっち側を変えていくとやっぱ時間、掛かりますよね。相当、時間掛かる。

堀越勿論、回るようにする為にはコストがどの位下がるとかですね、あと、1つの用途だけでなく、街のこういう幅広い用途で、まとめてインフラ化する、とか色んなアプローチが考えられますけども、それにしてもまだ高いので、

岸田重行

岸田重行

岸田そうなんですよね。でそれって、その何かこう、「街灯を建てましょう」的な話と、「道路を舗装しますか?」みたいな話と結局似てきちゃうので、

クロサカうん。

岸田そっち側の、『社会課題』と言ったら何かあの、社会の方で、公的な話に寄れば寄るほど、やっぱりその何か公共財的なというか、そっち側にどうしても色が近づいて行くのは仕方がないんですかね?

クロサカ自分で言っておきながら、という物言いなんですけど、でも今のお話を受けて、形はどうであれやっぱりランニングが回んないと駄目だよね?っていう事を考えると、鶏に卵を産ませると言う意味では公設民営的なアプローチも必要だと思うんですけれども。ただし…。

堀越うん。

クロサカそれだけだと、卵から雛が孵っても、育たないんですよね?

岸田そうそう、飯が食えなくなるんですよ。

クロサカまあ「ただ順番が整理出来たっていうだけでも良いんだ」とすると、それはもしかすると、意味がある事かも知れないですけど、まあ、産まれた以上はヒヨコなんだから「食わせてやれ。」「がんばれ。」っていう話になるかも知れないんですけれど。

堀越まああとはそのねぇ、回す『担い手』が必要ですよね。Wi-Fiの二の舞だけは避けた方がいい、という。

クロサカうん。

岸田まあでも、5Gの展開の中のまあある1つの局面としては、そういう社会課題とか社会インフラって言った時の、まあ「インフラ」って言うと言葉が広いんであれですけど、

クロサカうん。

岸田「何処までされるんですか?」とか、「どれくらいの…」まあ最終的にはさっきの『トラスト』だと思うんですけど、「そこまで行けるんですか?」っていうのを考えた時に、何割かはそこのとこの話がやっぱ出てきますから。

クロサカうーん。

岸田でもそういう話は、MWCに来てる、特にニーズ開拓をずっとやってきた大手さんは、身に染みて感じているんだと思うんですよね。

クロサカうん。      

岸田これはキャリアさんもそうだしベンダーさんもそうだし、端末メーカーさんですら、多分その、それはあの社会課題じゃないかも知れなくて、スマホとか消費者側かも知れないけど、でも5Gならではのものっていうのは、試行錯誤されてますけど、

クロサカうん。      

岸田まだ決定打、「これだー!」っていう感じのものに行き切っていない。

クロサカそうですね。

岸田まだ途中段階な感じですよね?

クロサカうん、うん。

岸田だから、もうちょっと時間…まあどっかでポーンと出てくればそっから突破口を、何かワァッと行くっていうのもあるかも知れませんけど、まだ、見えていなくて、「そういう突破口が出るのかなぁ。」という期待は、こういうイベントなどではある訳ですけど、

クロサカうん。

岸田取っ掛かりが無い訳じゃないですけど、まだ出きってない感があるんで。

クロサカそうですよねぇー…。

岸田今の瞬間だと、まだ時間掛かるような、「いつフライするかまだ見えてこないよな?」っていう感じがするんです。ある意味、「5Gの投資が遅れてしまいそうです」というのは、投資する側の通信事業者からすると、ニーズが見えていないのに、周りが投資競争、投資競争みたいな話になっていて、

堀越うん。

岸田グローバル競争とかってって言う話で、キャリアさんが変に煽られる場面が少 し先送りになるんだとすると、それは、悪くない側面もあるのかも知れな いですね。

◇◆◇

「幻のMWC2020、変わる世界の通信業界(4)」に続く。

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