10月5日、スマートフォン決済のPayPayが、PayPay感謝デーキャンペーンと題して、一日限りの利用促進キャンペーンを実施した。支払い方法や上限額などいろいろな条件はあったものの、基本的には支払った額の20%相当が後日還元されるというものだった。しかし、当日アクセスが集中してシステムトラブルが生じてしまった。
筆者も、実際に二つのトラブルに直面した。まず、支払い時に支払い画面が表示されず、代わりに待機画面(「ただいま多くのお客様にご利用いただいており、一時的にご利用を制限しております。しばらく時間をおいて、再度お試しください」という表示と待ち時間)が表示された。レジの長い行列に並びいざ自分の支払いとなって、この画面と7分という待ち時間が表示されて絶句してしまった。もう一つは、当日家族が使いたいということでPayPayを使って送金したのだが、普段ならすぐに送られるはずが、一向に送金完了にならず、家族のアプリもエラー続出で立ち上がらない。挙句の果てに、最初は送った側の筆者のアプリ上で送金履歴が未受け取りリストに残っていたのだが、それも受け取りが完了していないにもかかわらず消えてしまったのだ。仕方なく問い合わせのメッセージを送ろうとすると、込み合っていて返信までに数日かかるとの表記がされていて、メッセージを送る気も失せてしまった(その後当日夜になって復旧し、未受け取りリストに復活した)。

表示された待機画面(https://paypay.ne.jp/notice/.assets/taiki.png)
PayPayは加盟店を着実に増やし、10月1日現在で加盟店数が150万カ所、登録ユーザ数は1500万人を突破したと発表している。TVCMも積極的に投入し、当日は相当な利用を見込んでいたはずなのに、このようなシステムトラブルを生じさせてしまうと、折角盛り上がってきたキャッシュレス決済の動きに水を差すことになりかねない。筆者だけでなく、同じようなトラブルに直面した利用者はかなりの数に上ったようだ。SNSでは多くの苦情やネガティブなメッセージが投稿されており、キャッシュレス決済市場全体にも大きなマイナスイメージを与えてしまった。
自社が推進したプロモーションが理由でシステムに負荷がかかり結果としてトラブルが発生したわけだが、同様のトラブルは昨年のキャンペーン時にも発生している。「決済」という信頼第一の世界で繰り返し同様の問題を起こしてしまったことにもっと危機感を持つべきだ。PayPayは、AWSなどのクラウドサービスを使って運用されており、大きな負荷が想定される際にはそれに対応して一時的にサーバのリソースを増やすことは可能なはずだ。それができないのであればキャンペーンの設計をもっと慎重にすべきである。PayPayはサービス利用規約で、「サービスの利用または利用不能により生じる一切の損害につき、故意または重過失がない限り、一切その責任を負わない」と規定しているが、今回のようなケースは、重過失とも言われかねないミスだろう。
PayPayの利用者だけではなく、他のスマーフォン決済事業者にとっても、今回のようなトラブルは大迷惑だということを十分肝に銘じて欲しい。
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出口 健(転出済み)の記事
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