2018年12月26日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

2019年は己亥(つちのとい)、電気通信インフラ建設150周年、次の段階を目指す準備をする年



2019年、おめでとうございます。今年の干支は己亥(つちのとい)、恒例により、どのような年なのか新年にあたり考えてみます。干支では、草木の姿が整った状態や種子の中にエネルギーがこもっている状態を示すとのこと、個人や組織では次の段階を目指す準備をする、内部の充実を心掛ける年となるようです。2019年は日本で最初の電気通信インフラ、即ち、東京・横浜間の電信線の架設工事が始まった1869年10月23日(太陽暦)から数えて150年になる節目の年に当たります(10月23日は電信電話記念日となっています)。そこで、今年起きることを改めて情報通信分野を中心に取り上げてみます。

最初に日本全体のこととして、今年は天皇陛下の在位30年の記念の年であり、また、天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位が4月30日と5月1日に行われます。天皇陛下の生前退位は約200年ぶりのことで、天皇陛下が上皇に、皇后陛下が上皇后となられるほか、秋篠宮殿下が皇位継承順位第1位を示す皇嗣となられます。まさに、新しい御代を目指す年となります。元号も改まり内部の充実を心掛けるに相応しいことです。

 情報通信の分野でも、次の段階を目指す新しいことが始まります。まとめると次の3つです。

  1.  5Gのプレサービスが9月に始まる
  2. 第4のMNO、楽天が10月からサービスを開始
  3.  中古スマホのSIMロック解除義務付けが9月から実施

加えて重要なこととして、昨年8月の諮問に対する情報通信審議会の中間答申が6月に行われることがあげられます。特別委員会などでの検討途中なので具体的な内容などは明らかではありませんが、情報通信産業・サービス分野で次の段階を目指す内容となるものと思います。これも己亥の年に相応しいことです。上述の3項目は既定路線上のことなので、目新しさに欠けるところがありますが、どれも日本のモバイル通信市場の将来を左右する競争環境の大きな変化をもたらす重大なことばかりです。即ち、5Gのネットワーク構築では、基本的に音声通信は既存の4Gネットワークを使い、5Gの超高速、超低遅延、多数同時接続という特徴を事業パートナーが活用できるところにネットワークを展開することになりますので、これまでの人口カバー率とは異なるサービス展開の判断基準が必要となります。また、ネットワークのエリアカバー形成でも、特定の組織(企業や法人等)に向けたサービス作りが伴うと予想されるので、その設備負担のあり方にも、ユニバーサルサービス的な面的な広がりが中心であった4G以前の時とは違った新しい方式が求められることになりそうです。5Gが持つサービス構造のあり方(BtoC中心からBtoB又はBtoBtoX へ)を見据えた基地局展開、即ち、エリア設定とコスト負担のあり方の関係が問われることになるので、ここでも次の段階の準備が必要になります。

楽天のMNO参入、第4のモバイル通信事業者としてのサービス開始も今秋10月が予定されています。通信に係る設備投資総額が6,000億円を下回るとの発表で話題となってきましたが、問題は金額のレベルではなく、その金額でどの範囲まで、どの位早くエリアカバーを充実できるのかが重要なことになります。サービス開始当初は既存事業者のネットワークを利用するローミング契約で全国のサービスエリアをカバーする計画でしょうが、不足が叫ばれている周波数免許を受けている以上、とにかく早く全国にサービスエリアを自ら構築する責務、即ち「他の既存事業者のネットワークを利用する場合においても、携帯電話事業者は自らネットワークを構築して事業展開を図るという原則に留意すること」との電波免許認定時の条件を満足する必要があります。

そこで気になることに、今年4月1日に楽天がグループ内の組織再編を行って、現在の楽天のMVNO事業を新しくMNO事業を行う完全子会社である楽天モバイルネットワークスに継承させることがあります。このことは既に昨年8月の取締役会での決議を経て発表されていることですが、他社の回線を使うMVNO事業と周波数免許を得て自らの回線を構築するMNOが同一法人内で共存できるものかどうか、通信事業の競争構造のあり方はもちろん、企業統治のあり方としても課題を感ずるところです。加えて、その楽天モバイルネットワークスが既存事業者との間でローミング契約によってサービスエリアをカバーするとなると、何がどのように事業統制され、市場競争上の公平性が担保されるのか、まったく新しい競争関係が問われていると思います。第4のMNO参入による競争促進なのか、それともMVNOの充実による競争促進なのか、情報通信の産業政策と電波政策との整合性を含めて、競争環境の整備・充実が改めて必要になります。

3番目の項目、中古スマホについてのSIMロック解除義務付けが今年9月に実施となることも、スマホの中古市場拡充を目指す政策で、MVNOの競争基盤を強化するものです。ただ、中古スマホの流通拡大には、価格の信頼性・透明性だけではなく、端末機器の性能評価の開示など、様々な新しい消費者保護上の課題が生じるでしょうが、完全なSIMフリー化は、従来のモバイル通信市場が基本的にMNOによる回線サービスと端末機器を結び付けた、いわゆるバンドル方式(垂直統合)で成立してきたことへの大きな挑戦となると思います。ここでも次の段階である、回線サービスと端末販売とを分離した方式を準備する事態を迎えています。一般的にサービスの市場では、成長・拡大期には垂直統合型のバンドル方式が広がりますが、成熟期になって消費者のコスト意識が高まってくると、アンバンドル方式が普及してきました。これは固定通信市場でも、金融市場でも過去に見られた事象なので、時代の大きな流れといえるものです。いよいよ、モバイル通信市場でも分離プランが主流になってくるでしょう。そうなると、MNOのキャリアショップ(代理店)の経営基盤に重大な影響をもたらしますし、キャリアショップを頼りにしている利用者にも大きな影響が出かねません。SIMフリー端末の販売流通の拡大に応じて、スマホの立ち上げや設定をもっと簡便にするアプリやその手順の標準化(一般化)やサポート体制の拡充を進めることが急務です。これがユーザーが求める新しい次の段階です。

最後に、今年の5Gプレサービス開始の契機となっている「ラグビーワールドカップ2019日本大会」に触れておきます。今年の9月20日(金)から11月2日(土)まで日本の各地12都市で開催されます。参加チームは20、試合数は4プール内総当たりのプール戦と決勝トーナメント含めて、全48試合が予定されています。昨年8月には、NTTドコモはこの大会のトーナメントサプライヤー契約を締結したと発表しています。さらに、大会では5G端末を無料で貸し出す方針を明らかにしています。どのような5Gサービスが体験できるのか楽しみです。ラグビーワールドカップでは日本が前回のイングランド大会で3勝をあげて、世界の注目を集めたことは記憶に新しいところです。特に、南アに勝利した大逆転劇は感動ものでした。あの感動を日本国内で、5Gを通じて味わえたら最高です。5Gのプレサービスにとってベストな舞台、待ち遠しい限りです。

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