2019年4月25日掲載 ICT利活用 InfoCom T&S World Trend Report

公助から共助へ~地域課題の解決や地域経済の活性化につながるシェアリングエコノミーの活用


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2018年は、民泊を提供するための法整備が整い、シェアリングエコノミーの活用が加速し、広く一般に受け入れられる基盤が整った年になった。そのなかで、政府や地方公共団体は、人口減少や高齢化が進んだことで生じた様々な地域課題の解決や地域経済の活性化に、シェアリングエコノミーを推進・活用し始めている。

一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局 シェアリングシティ統括ディレクターで、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師、さらに総務省地域情報化アドバイザーと総務省地域力創造アドバイザーも務める積田有平氏に、シェアリングエコノミー協会の取り組みや、政府・地方公共団体におけるシェアリングエコノミーの推進・活用の事例、今後の取り組み等を伺った。

1.シェアリングエコノミー協会の取り組み

-協会の取り組みを教えてください。

シェアリングエコノミー協会は2016年1月に設立されました。これまで社会のなかで、サービスの提供やモノの販売の主体は企業でしたし、それをベースとして世の中の仕組み、法体系等ができていました。しかし、シェアリングエコノミーは、個人が担い手になります。協会のビジョン「個人が主役の社会をつくる」のとおり、個人が主体となるルールを作り、個人が主体の世の中に変えていきたいと考えています(図1)。

シェアリングエコノミー協会のビジョン

【図1】協会ビジョン
(出典:シェアリングエコノミー協会提供)

現在、シェアリングエコノミー協会の会員企業数は、事業者、賛助企業含めて270社ほどまで拡大しました。

これまで各種協会等の業界団体は、業界に所属する企業により、その業界の健全な発展等のために形成されることが大宗であったと思います。

シェアリングエコノミー協会は、業界の健全な発展のみならず、シェアリングエコノミーを活用した個人が安心して活躍できるよう、個人もサポートすることで、「個人が主役の社会」をつくっていきたいと考え、2018年、個人会員制度「SHARING NEIGHBORS」を作りました。

シェアリングエコノミーを活用している人が増えているなかで、シェアリングエコノミーだけで生活している人もいます。そのような人たちを、協会は「シェアワーカー」と呼んでいます。個人会員制度では、シェアワーカーのための福利厚生等を提供することで、シェアワーカーをサポートしていきます。そして、2019年末には、個人会員1万人を目標として、サポートの輪を拡げていきます(図2)。

個人会員制度

【図2】個人会員制度について
(出典:シェアリングエコノミー協会提供)

また、同時に、協会のビジョンに賛同し、地域のシェアリングエコノミー定着に向けた普及啓発や個人のシェアワーカーへの支援等を行っていただける、NPOなどの公益団体、地域活動団体、大学、社会的企業向けには、アソシエイト会員を新設しました。

-地方公共団体向けの取り組みを教えてください。

2016年6月、政府の成長戦略:「日本再興戦略2016」で、初めてシェアリングエコノミーについて言及され、普及推進策と、安心安全のガイドラインが当年内に示されることとなりました。

まず、安心安全のガイドラインとして「シェアリングエコノミー認証制度」が定められました。シェアリングエコノミー認証は、そのサービスが、シェアリングエコノミー協会が設定した自主ルールに適合していることを示すものです。この自主ルールは内閣官房IT総合戦略室がモデルガイドラインとして策定した「遵守すべき事項」をもとに設定されています。

シェアリングエコノミー認証制度のマーク

【図3】シェアリングエコノミー認証制度のマーク(出典:シェアリングエコノミー協会提供https://sharing-economy.jp/ja/trust/)

一般的に、法律を制定するには長い時間がかかります。ただ、ICT社会では、新しいサービスがこれまでと比較にならないスピードで生まれていますから、そのスピードに合わせて、適した世の中のルールを作ることも必要なことだと考えています。そこで、今回は、政府が決めたガイドラインに基づいて、業界団体であるシェアリングエコノミー協会が、自主的なルールを策定し、安心安全のレベルを担保することとしました(図3、図4)。

消費者の意識

【図4】消費者の意識
(出典:シェアリングエコノミー協会提供)

現在では、日本国内におけるシェアリングエコノミー認証制度で培ったノウハウ等をベースにして、世界におけるルールの整備を進めています。具体的には、(一財)日本規格協会(JSA)との協力をもとに、ISO・「シェアリングエコノミーに係る技術委員会」(ISO/TC 324)で国際規格開発に参画しています。技術委員会の設立は日本から提案されており、今後は日本主導のもと国際規格の開発が行われる予定です。

一方の普及推進策としては、「シェアリングシティ」が定められました。全国の自治体は、少子高齢化や人口減少、子育て・教育環境の悪化、財政難など、様々な課題を抱えています。これらの課題を公共サービスだけに頼らず、市民ひとりひとりが「シェア」しあうことで解決し、自治体の負担を削減しながら、サステナブルで暮らしやすい街づくりを実現することが「シェアリングシティ」の目的です。

シェアリングシティ認定のマーク

【図5】シェアリングシティ認定のマーク(出典:シェアリングエコノミー協会提供)

協会では、ガイドラインをもとに協会が定めた認定条件を満たす⾃治体に対して、シェアリングシティ認定マークを無償で授与しています。2019年4月10日時点で、16自治体が認定されています(図5、図6)。

シェアリングシティ認定条件

【図6】シェアリングシティ認定条件
(出典:シェアリングエコノミー協会提供)

2.政府の取り組み

-政府の取り組みを教えてください。

2017年6月の成長戦略「未来投資戦略2017―Society 5.0 の実現に向けた改革―」で、「シェアリングエコノミーを活用した地方公共団体の事例を、年度内に少なくとも30地域で創出すること」が新たなKPIとして盛り込まれました。そして、その翌年2018年6月の成長戦略「未来投資戦略2018―『Society 5.0』『データ駆動型社会』への変革―」では、2018年3月に「シェア・ニッポン100」として発表した活用事例を2018年度末までに倍増させることが記載されました。

その取り組み結果として、2019年3月、内閣官房シェアリングエコノミー促進室から、「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~ シェアリングエコノミー活用事例集」で、累計76の地域事例が発表されています(図7、図8)。

「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」の取り組み

【図7】【図8】内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」の取り組み(平成31年3月)
(出典:https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/share_nippon_100_H30.pdfより抜粋)

また、地域力の創造・地方の再生を支援する総務省においても、地域力創造グループが、2018年度からシェアリングエコノミーを活用し、地域課題の解決や地域経済の活性化を図る地方公共団体の取り組みを「シェアリングエコノミー活用推進事業」で支援しています。この支援で創出された事例も先の「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」に掲載されています。

一方の普及推進に向けては「シェアリングエコノミー活用推進事業」を大きな転機となる事業と捉えています。シェアリングエコノミーが「ICTの先進事例」としての実証実験フェーズから、「地域を支えるインフラ」として社会実装していくフェーズになったことを表してしている事業だったからです。

当時を振り返りながら話すと、2016年、2017年にも総務省でシェアリングエコノミーに関する事業はありました。しかしながら、旧郵政省サイドで、ICTの先進事例、つまり実証実験として新しいICTサービスを世の中に出していこうといった趣旨でシェアリングエコノミーが語られていました。

私を含め、内閣官房から任命されたシェアリングエコノミー伝道師等が地域公共団体等と相談しながら事例を創出していくと、当時の総務大臣 野田聖子さんが、「総務省として、社会実装してインフラにしていこう」といった趣旨の発言をされました。

それを受けて、シェアリングエコノミーをICTの先進サービスから、世の中の当たり前にしていくために、旧自治省サイドの地域力創造グループがシェアリングエコノミーを担いで、「シェアリングエコノミー活用推進事業」をつくり、モデル事業として地方公共団体を支援し、さらに、モデル事業の成果を総合的に分析して、次なる横展開につなげようとなったのです(図9)。

平成30年度「シェアリングエコノミー活用推進事業」採択団体一覧

【図9】平成30年度「シェアリングエコノミー活用推進事業」採択団体一覧
(出典:総務省http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei05_02000103.html)

その「シェアリングエコノミー活用推進事業」の報告会が、2019年3月に実施され、私も有識者の一人として参加してきました。報告会では、各団体の「取り組み前の状況(課題)」「課題に対する取り組み」「導入後の状況(取り組みの効果)」が説明され、分析として、事業効果や地方公共団体が推進していくうえでの課題・留意点等の報告がありました。やはり、実施してみなければ分からなかった課題、留意点等をサービスやフェーズ毎にまとめられた意義は大きく、今後、シェアリングエコノミーの活用を検討していく地方公共団体等にとって、とても参考になりますし、シェアリングエコノミーの活用も進んでいくと考えています。

また、報告会には、今後、シェアリングエコノミーの活用を検討している自治体等関係者が約50名傍聴に訪れていました。全体の質疑応答では、傍聴者から今年度取り組んできた自治体等関係者に対して、「民泊やライドシェア等については、法律や規制があるなかで事業を進めてきた苦労やノウハウ等を教えてほしい」、「本事業のあと、継続的かつ自走的な事業を行っていくために取り組んできたことを教えてほしい」等、突っ込んだ質問が投げかけられる場面もみられ、関心の高さを窺うことができました。

3.地方公共団体の具体的なシェアリングエコノミー活用事例について

-具体的なシェアリングエコノミー活用事例を教えてください。

シェアリングエコノミーの活用には、幾つか分類があるのですが、「地域の足の確保」「需要ひっ迫の解消」「就労機会の創出」の事例を、「シェア・ニッポン100 ~未来へつなぐ地域の活力~」から紹介します。

(1)地域の足の確保(天塩町、紀北町)

地方の公共交通では、地域の事業体が利益を出しながら運営していくことが難しくなっています。特に北海道では、人口が分散していることがこれに拍車をかけています。

北海道天塩郡天塩町では、総合病院など生活インフラが約70km離れた稚内市にあり、公共交通機関を利用すると片道3時間かかり、日帰り往復ができませんでした。そこで、天塩町と稚内市を行き来する自動車の空席を相乗り活用した、コストシェア型の「相乗り」マッチングサービスを導入することで、住民相互の助け合いにより、地域住民の足の確保に取り組んでいます(図10)。

北海道天塩郡天塩町における取組

【図10】北海道天塩郡天塩町における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋)

また、三重県北牟婁郡紀北町においても、町内唯一のタクシー事業者が廃業し、自由な移動手段がない地域において、あいのり運送実証事業として、移動手段のない方を、ドアツードアで目的地まで移送する取り組みが実施されました。

紀北町相乗り運送運営協議会というNPO法人を立ち上げたうえで、公共交通空白地有償運送の登録を受けて実施されました。町内の住民からは買い物や病院など自由に外出することができると喜ばれ、その有効性が裏付けられています(図11)。

三重県北牟婁郡紀北町における取組

【図11】三重県北牟婁郡紀北町における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋))

(2)需要ひっ迫の解消:民泊(釜石市、飛騨市)

2019年には、ラグビーワールドカップ2019日本大会が、2020年には、東京オリンピック・
パラリンピック競技大会が開催されます。多数の来訪者が予想されるなか、そのためだけに施設をつくることは困難です。

岩手県釜石市では、シェアリングエコノミーを活用することで、大規模イベント時における需要増に対応しようという事例がありました。民泊は、民家に泊まることで「おもてなし」ができますから、それによる関係人口の創出ができると考えています。釜石市では、ラグビーファン同士の交流も生まれていくことでしょう(図12)。

岩手県釜石市における取組

【図12】岩手県釜石市における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋)

また、岐阜県飛騨市においては、空きスペースを活用した民泊と住民が有するスキルのシェアにより、過疎高齢地域の交流人口の増加を目指した取り組みがされました。

今後の地方振興のかたちとして、「住民の生きがいづくり」や、「地域住民が主役となること」は、必要なことのひとつだと考えています(図13)。

岐阜県飛騨市における取組

【図13】岐阜県飛騨市における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋)

(3)需要ひっ迫の解消:公共施設(横浜市青葉区、北相木村)

横浜市青葉区には、人口約30万人がおり、区民が集まれる施設が足りないという声が上がっていました。そこで新しい施設をつくるのではなく、シェアリングエコノミー認証制度の認証取得企業であり、スペースシェアの代表的な企業であるスペースマーケットと組むことで、民間の遊休資産をシェアして、区民が集まれる場所を確保しています(図14)。

横浜市青葉区における取組

【図14】横浜市青葉区における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋)

また、長野県南佐久郡北相木村では、村内にある空き施設をシェアオフィスとして運用するとともに、そのシェア施設運用に必要な労働力を、手の空いている村民から提供してもらう取り組みがされました。

地方公共団体が保有する施設のアイドリングタイムを活用するとともに、地域の方の就労機会も生む、新しいチャレンジだったと思います(図15)。

長野県南佐久郡北相木村における取組

【図15】長野県南佐久郡北相木村における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋)

(4)就労機会の創出(真鶴町)

地方公共団体にとっては、若年層の人口流出に歯止めをかけ、人口維持増加を図るためには、働く場の確保や子育て負担軽減等は、喫緊の課題だと考えます。

神奈川県足柄下郡真鶴町では、クラウドソーシングの仕組みによる仕事の場づくり開拓と自走チームの形成を目指した取り組みが行われました。参加者全員が働き甲斐や生活への張りが生まれたこと、次年度も継続して自走実施していける見通しであることは、とても素晴らしいことだと思います(図16)。

神奈川県足柄下郡真鶴町における取組

【図16】神奈川県足柄下郡真鶴町における取組
(出典:内閣官房シェアリングエコノミー促進室
「シェア・ニッポン100~未来へつなぐ地域の活力~」(平成31年3月)より抜粋)

これは、私の経験談ですが、約20年前、都内の某市で大企業の工場が閉鎖されることになり、そこに就労され、近くに住んでいた方々が移住してしまうといったことがありました。企業等の他力でマチをつくっていたら、その企業の業績が悪化して、マチごと衰退してしまったのです。

シェアリングエコノミーによる就業機会創出では、工場を誘致しなくても、その地域が、海が、山が、自然が、人が好きであれば、その地域に住みながら、インターネットを介して時間と場所に縛られずに働くことができます。確かに、一定以上のスキルは必要かもしれませんが、どこにでも働く場が創出できることは、とても意義のあることだと考えています。

さて、これまでは地域で何か困りごとがあると、地方公共団体が受け取り、解決のために尽力してきました。公共系サービスも主に地方公共団体等が提供していました。今後、人口減少や税収減による地方公共団体の財政難等により、公共系サービスの継続・実現は難しくなってくると思います。ただ、サービスは必要ですから、シェアリングエコノミーの活用により、公共系サービスを補完することで、地域課題の解決や地域経済の活性化につなげていくことができると考えています(図17)。

公共サービスを補完するシェアリングサービス

【図17】公共サービスを補完するシェアリングサービス
(出典:シェアリングエコノミー協会提供)

J・F・ケネディが大統領就任演説で「国家が諸君のために何ができるかを問わないでほしい、諸君が国家のために何ができるのかを問うてほしい」といったように、自発的に、個人が持っているものをシェアしながら助け合う世の中になっていけたら良いと思っています。 

4.ICTについて

-ICTについて、どのように捉えていますか

シェアリングエコノミーの狭義の定義は、インターネット上のプラットフォームを介して、N対Nでマッチングされた、CtoCの取引であることです。シェアリングエコノミーが革新的であったのは、ICTを用いて、これまで考えられなかったCtoCのマッチングが実現されたことです。

ICTが進展し、皆がスマートフォン等を持ち、インターネットにつながるようになりました。さらに、様々なものの利用状況や在庫がリアルタイムで可視化され、即座に予約/購入や決済ができるようになりました。例えば、移動中の自動車の座席が空いていることが分かる、来週出張に行く北海道にある個人所有のスペースの様子や、その予約状況が分かる。そして、その場で予約をして決済まで完了することができるというようなことです。

また、相互評価の仕組みにより「信頼」が可視化されています。やはり個人と個人の取引には、不安が付きまといますが、過去の取引レビューから、サービス提供者がこれまでどのようなサービスを何人にどれくらい提供しているかが分かりますし、利用者についてもどのようなマナーで使う人か等についてレビューが蓄積されています。

 ICTの進展により、「リアルタイムで状況が可視化されること」、「信頼が可視化されること」の2つがもたらされたことが、シェアリングエコノミーが成り立つベースとなっていると考えています。

一方で、地方で地域課題の解決のためにシェアリングエコノミーが活用されたとき、利用対象者が高齢者等で、スマートフォンやPCに不慣れな方が多いことも事実です。これらICTに不慣れな方々をどのようにフォローしていくかという点は、活用や定着の点で重要だと考えています。

そこで、地域に根差したICTを支える会社等には、シェアリングエコノミー活用の提供者と利用者をつなぐ中間的な役割や推進役として、そのサポートや電話代行受付対応等を実施いただけると、高齢者等もより安心して利用できるようになり、さらに活用・定着化が進み、地域課題の解決も進んでいくと考えています。

5.他業界等からの参入・提携等について

-他業界からの参入・提携等について教えてください。

これまで、シェアリングエコノミー業界は、主にベンチャー企業が牽引してきました。2018年度下期に、国内大企業が、事業のひとつにシェア事業を取り込もうとするニュースが続き、潮目が変わってきたと感じています。

(1)ライドシェア:ソフトバンク×トヨタ自動車(×日野自動車×本田技研工業)

ソフトバンクは、これまでにライドシェア大手の米国Uber、中国DiDi、シンガポールGrab、インドOLAに筆頭株主として出資しています。ソフトバンクが出資する会社を合計すると、世界のライドシェアの9割になると、孫氏はコメントしています(図18)。

ソフトバンク・トヨタ 共同記者会見

【図18】ソフトバンク・トヨタ 共同記者会見(2018年10月4日)
(出典:ソフトバンクグループ代表 孫 正義氏プレゼンテーション資料より抜粋
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2018/20181004_01/)

そのソフトバンクとトヨタ自動車が、2018年10月に戦略的提携を発表しました。

孫氏は、出資している4社を単にライドシェア企業ではなく「AIを活用したモビリティプラットフォーム」として捉えていて、「モビリティで世界一のトヨタと、AIに注力するソフトバンクが提携することで、新しい時代のモビリティ、これまでにない進化したサービスが生まれる」とコメントしています。

一方のトヨタ自動車も、次世代のモビリティサービスを考えたら、孫正義氏の背中が見えたと豊田章男氏がコメントしていました。今後、トヨタが自動運転で世界覇権を争うためには、既に海外ライドシェア大手に出資しているソフトバンクと組むしかなかったというのが真相だと言われています。

その後、2019年3月末には、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社であるMONET Technologiesが、日野自動車、本田技研工業とも資本・業務提携すると発表されています 。

(2)スペースシェア:スペースマーケット×東京建物

スペースマーケットは、あらゆるスペースを1時間単位で誰でも簡単に貸し借りできるスペースシェア事業者です。2014年4月のサービスローンチから5年で、イベントスペース、会議室、撮影スタジオ、映画館、住宅等、1万件以上のスペースが登録され、幅広い用途で利用されるプラットフォームになっています。

2018年11月、スペースマーケットと、創立120年を超える不動産会社である東京建物株式会社とが資本業務提携を行いました。大手不動産会社が、これまでの「売買」「賃貸」に「時間貸し」というスペースシェアの選択肢を加え、これまでになかった新しい経済循環を生み出し、不動産開発や運用・活用手法の多様化を実現していくことが期待されています。

その他にも、パナソニックは2019年1月に、国内の都市部や観光地など数カ所で、電子錠の施錠や解錠のほか、走行データの記録などができる「IoT」の電動アシスト付き自転車を用いたシェアリングサービスの実証実験を始めると発表しました。先に挙げたソフトバンクもハローサイクリングとしてシェアサイクリング事業に取り組んでいます。

このように、大企業が参入してくることで、シェアリングエコノミーの認知度があがります。そして、大手企業が推進役となることで、地域課題の解決や地域経済の活性化にシェアリングエコノミーが活用される事例がより創出され、その活用が進むことで、世の中の当たり前になっていくと思います。

6.今後について

-今後の取り組み等について教えてください。

シェアリングエコノミー伝道師としても、地域力創造アドバイザーとしても、継続して、地域の課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

日本のシェアリングエコノミーでは、地方での活用事例が多く創出されてきました。一方で、世界的にはシェアリングエコノミーは都市部において活用が進んでいますから、日本の都市部においても活用が進むような取り組みもしていきます。

都市部での取り組みのひとつとして、2019年3月、シェアリングエコノミー協会と渋谷区観光協会は連携協定を締結することを発表しました。

これは、「PLAY!SHARE SHIBUYA」を合言葉に、渋谷区内のユニークスペースや商店街、渋谷区民はもちろん渋谷に関係する様々な方々のスキルやモノ等を新たな観光資源としてシェアすることで、これまでの観光サービスとは違った新しい体験を提供し、地域内のさらなる観光振興に取り組もうというものです。

取り組みの第1弾として、「PLAY!SHARE SHIBUYA 2019GWの10連休はシブヤで遊びつくそう!」 を企画実施していきます。参画するシェアサービス会社は、Airbnb Japan 株式会社、軒先株式会社、株式会社ラントリップ等13社です。是非、参加いただき、シェアサービスを体感してみてください(取材時点は詳細未定、随時発表予定)。

7.取材を終えて

積田有平

【写真1】シェアリングエコノミー協会積田有平氏
(出典:積田氏提供)

2018年9月、日本最大のブランドバッグ シェアリングサービス『Laxus』を展開するラクサス・テクノロジーズ株式会社を取材した本誌10月号の記事に、筆者は「さらなるICTの発展と共に、シェアリングエコノミーサービスは、既存サービスとケースバイケースで使い分けられながら着実に成長し、社会的課題の解決手段のひとつとして、更なる大きなトレンドとなっていくことだろう」との期待を記載していた(レポート参照)

それから約半年が経ち、今回は、協会・政府の取り組み、地方公共団体の活用事例などを取材したところ、その期待はさらに強くなった。

これまで、当たり前に利用できていた公的なサービス(公助)に、民間の力を活用したシェアリングエコノミー(共助)を活用して補完することで、持続可能な、かつ、利用者にとって質の高いサービスを実現できる実例が、創出され始めている。

シェリングエコノミーを通じたサービスの可能性は無限に近いとも言え、今後も公的サービスを補完する新たなサービスが続々と誕生するに違いない。

また、大企業は、新たにモノを作っても売れない時代が到来し、サブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーを活用して利用してもらう方向にシフトし始めている。

日本には、モノに魂が宿るとする逸話があるように「モノを大切にしていく文化(勿体ない文化)」や、向こう三軒での寄り合いや醤油の貸し借りがあったように「お互い様文化」がある。

所有から利用へという時代の流れのなかで、シェアリングエコノミーサービスは、改めて日本の各地で受け入れられ、当たり前の取り組みになっていくことだろう。

そのベースには、ICTの活用がある。シェアリングエコノミーサービスには、あるものをネットワーキングして、リアルタイムで状況を把握し、マッチングしていくことがベースとして必要であることから、地域に根差したICT企業等が地域課題をICTで解決する推進役として果たすべき期待・役割は今後ますます大きくなっていくと考える。

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