2019年11月15日掲載 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:ロシア ~北の大地の穏やかで陽気な日常生活



ロシア旅行の準備はトラベルサイトで万全

ロシアを訪問した。モスクワとサンクトペテルブルク(以下、「サンクト」)の2カ所で6泊8日の旅である。現地に知人が滞在していたこともあり、パックツアーには参加せず、自宅パソコンから外資系トラベルサイト(日本語版)を通じて、すべての航空機とホテルの予約を行った。選択にあれこれ迷った時間を除けば、手配に要したのは正味1時間程度である。結果的に何のトラブルもなく、ホテルとのやり取りもチャット(英語)で行えるなど、とても便利であった。また、現地ではボリショイ劇場、ミハイロフスキー劇場(サンクト)でバレエを鑑賞したが、その予約・発券も自宅からオンラインで簡単に済ますことができた。なお、ビザは駐日ロシア大使館の独占代理店に直接申し込んで取得したが、さすがにオンラインのリアルタイムという訳にはいかなかった。ただし、応対は親切丁寧であり、時間的にも1週間程度でビザを押したパスポートが返送されてきた。

JALの機内Wi-Fiはドイツテレコムのサービス

成田からモスクワのドモジェドボ空港まで約10時間のフライトは、コードシェアでS7航空(旧シベリア航空)の便であったが、実際には機体(B787-8)、乗務員とも日本航空(JAL)の運航であった。B-787-8はエコノミーでも前後の座席のスペースが広く、天井も高いため、かつてのビジネスクラスに近い快適さであった。また、各席の前座席に埋め込まれた1人1台のコンソールにより、映画、テレビ、ゲーム、音楽など100種類を超えるエンタメがオンデマンドで選び放題だった。当然ながら、離着陸時を除く全行程でWi-Fiが利用可能であった。筆者も使ってみたが、図1のようにドイツテレコムのモバイル事業部門であるT-Mobileの衛星サービスが使われていた。

JALの機内Wi-Fiのスマホ画面-「T」はドイツテレコムのシンボル

【図1】JALの機内Wi-Fiのスマホ画面-「T」はドイツテレコムのシンボル
(出典:Japan Airlinesのシステム画面より)

JALのWi-Fi料金は1時間プランが10.15ドル、3時間プランが14.40ドルである。JALカードを使うと10%の割引が適用される。これを高いと考えるか安いと考えるかは、個人のニーズにより様々であろう。通信速度・品質はベストエフォートに近いが、ビジネスマンにとっては、到着後の出迎えなどの連絡に必須かもしれない。ロシアに入ってからのモバイル通信手段としては、他の主要国と同様であるが、1.現地SIMカード(日本でも購入可能)、2.日本の携帯電話会社の24時間定額パケットパック、3.ポケットWi-Fi(成田空港で貸出)の3つの手段がある。色々と迷って3.を使ったがトラブルは皆無であった。他の2つの手段も含めて、どれが最善かはこれも個人の好みや状況次第であろう。

モスクワはいたって普通の街

モスクワの街はかなり西欧化された印象であった。キリル文字の看板がなければ、欧州のどの都市に自分が居るのか、直ぐには分からない位であろう。表参道や銀座と変わらないか、それ以上にお洒落なレストランやショップを随所で見かけた。意外かもしれないが、何の心配もなく街を散歩できる安心感が旅行者にとっては有り難い。人口1,250万の欧州最大都市(第2位はロンドンの850万)ということもあり、半白夜の日没前後(夜11時頃)でも子供連れや女性を含む群衆が至る所にいるので、「寂しい、薄暗い、怪しい」という雰囲気はない。筆者はボリショイ・バレエ(写真1)を鑑賞した後、夜11時過ぎにクレムリン周辺の繁華街を歩き回った。当日はソ連崩壊直前の1990年にロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の人民代議員大会が国家主権に関する宣言を採択した「ロシアの日」であり、市内のあちこちで小規模な反政府デモが行われていたが、機動隊の一群のすぐ横で、多くの市民、観光客が楽しげに談笑しているのは不思議な光景であった。

ボリショイ・バレエのカーテンコール

【写真1】ボリショイ・バレエのカーテンコール
(出典:筆者撮影)

また、写真2はモスクワ新都心の夜11時の光景だが、川沿いの道をのんびりと散歩する男女の姿が映っている。知人によればこれが日常風景だそうだ。郊外の工場街などに行けば事情は違うのかもしれないが、中心部と周辺で特に治安の差はないそうだ。サンクトは観光地のため、中心部でもスリやひったくりの出没エリア(概ね固定地域)があるようだが、モスクワはその心配もほとんどない。これは現地滞在の長い知人の発言なので間違いないと思われる。もっとも、スリが多いというのは今や欧州標準かもしれないが。

夜11時のモスクワ新都心(Moscow City地区)と散歩者

【写真2】夜11時のモスクワ新都心(Moscow City地区)と散歩者
(出典:筆者撮影)

とにかく便利なUberライク・サービス

今回の旅で何よりも便利であり、かつ、心理的な安心感を醸成してくれたのが、UberライクなYandexタクシーという配車サービスである。実際のところ、今回の旅では飛行機以外の移動手段はすべてYandexを利用した。その結果、壮麗な駅舎で有名な地下鉄を一度も使わなかった。現地の市民も同じようであり、知人の話では近年道路の渋滞が激しくなっているそうだ。以下、Yandexについて少し詳しくご紹介しよう。

Yandexタクシーのクラス別スペック(伝聞・体験ベース)

【表1】Yandexタクシーのクラス別スペック(伝聞・体験ベース)
(出典:筆者作成)

YandexタクシーのシステムはUberと非常に似ている。それもそのはず、ロシア最大のICT企業であるYandex とUberが共同出資している事業なのである。弊社内で各国のUberもしくは類似サービスの利用経験者と話をしたが、基本的なスペックは他国とほぼ同一であった。ロシアでも市内中心部であれば、どこで呼んでも概ね5~7分程度でタクシーがやって来る。画面上で見ると、3~4台が当方からの受注を競っている感じであった。サービスクラスの主要なものは「エコノミー」、「コンフォート」、「ビジネス」の3種類である。その特徴を知人の話と体験に基づいて整理すると次ページ表1のとおりである。

上記のとおり、ロシア語が話せない旅行者は「C」以上を使うのが無難だが、「E」であってもぼられたり不快な目に遭ったりすることはまずない。そもそも、そのようなタクシーを排除する目的で「料金は配車時に完全決定/クレジットカードで対面のやり取りなしに自動引き落とし/乗客による運転手の評価」が導入されているので当然だ。運転手はマナーが悪ければ失職の危険性もあるが、逆に、良ければ乗客からチップを受け取れるので(下車後のカード払いも可能)、真面目に運転する「飴と鞭」に直面しているのである。具体的な料金水準であるが、図2のようにサンクト中心部からプルコヴォ空港までの18キロで1,420ルーブル(約2,800円)であった。1キロ当たりの料金は155円の計算になる。それに対して、成田空港から上野までの70キロをタクシーに乗るとすると、予想料金は22,000円なので、1キロ315円とロシアの倍の料金がかかる。

Yandexタクシーのルートと料金。日本の半分の安さ

【図2】Yandexタクシーのルートと料金。日本の半分の安さ
(出典:Yandex.Taxのシステム画面より作成)

Yandexはタクシー会社とコラボレーションしているようで、街中で写真3のような塗装のタクシーをよく見かけた。ただし、「C」以上のクラスを呼ぶと、通常は市民ドライバーによる一般車(公認白タク)がやって来る。

街中で見かけた公式塗装バージョンのYandexタクシー

【写真3】街中で見かけた公式塗装バージョンのYandexタクシー
(出典:Yandex公式サイトのブログより)

サンクトペテルブルクの陽気な人々

ソ連時代を知る人には信じられないかもしれないが、現代のロシアの空港は待合ロビーであれば基本的に撮影OKである。筆者は写真4のとおり、サンクトの空港内でロシア・ナショナルチームのユニフォームを着た若い女性の一群を見かけた。珍しいので遠くからカメラを向けた瞬間に相手も気が付いて、飛び上がって手を振ったりピースサインを出したりして、こちらが気恥ずかしくなるくらいの大騒ぎとなった。近づいて「何の種目ですか?」と聞いたところ、「Waterpolo !!(水球)」との答えであった。その場でスマホで調べたところ、2018年のワールドカップでは米国に次いで準優勝した世界屈指の強豪チームであった。

女子水球のロシア・ナショナルチーム

【写真4】とにかく明るい女子水球のロシア・ナショナルチーム
(サンクトのプルコヴォ空港)
(出典:筆者撮影)

サンクトの街や人々の印象を述べるならば、モスクワと同じく「普通の欧州の街」である。ただし、印象的には観光客数は圧倒的にサンクトが上回っている。最も多いのは距離的に近いドイツ人やスカンジナビア人だそうだが、旗に引率されたアジア系の団体ツアーも随所で見かけた。

レニングラード(現サンクト)は1917年のロシア革命の中心地であり、第二次世界大戦中はナチスドイツに900日間に及び包囲され、50~100万人の市民が飢餓と寒さで死亡したという過酷な歴史の舞台である。しかし、大戦終了から75年が経過した今、写真5のとおり、市民はレストランで寛ぎ、河岸では日光浴を楽しみ、その傍らで結婚式の記念撮影が行われるなど平和な光景が広がっている。ロシアに限らず、世界の国々は日本の新聞、テレビ、ネットで伝えられるニュースと、実際に訪れた印象が大きく異なることが多い。今回の旅でも、改めてその点を痛感した。

冬宮(エルミタージュ美術館)を望むレストラン

【写真5】サンクトのネヴァ河ごしに冬宮(エルミタージュ美術館)を望むレストラン
(出典:筆者撮影)

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