2021年7月28日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

デジタルインフラの取り組み ~通信インフラからデータセンターまでインフラ連携



先月号の本稿巻頭“論”で「デジタル産業の確立~デジタルトランスフォーメーション(DX)による価値創出」を取り上げて、新しい産業として他社にデジタルケイパビリティを提供する企業をデジタル産業と捉えることを指摘しました。このデジタル産業の認識を経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略検討会議」では次のとおり提示しています。

(区分)

 

(要素)

全ての産業

―――

デジタル化は不可避

デジタル産業

―――

クラウド、サイバーセキュリティ、地域デジタル産業・・・

デジタルインフラ

―――

データセンター、通信機器、5G・・・

半導体

―――

集積回路

デジタル産業・デジタルインフラ・半導体はデジタル社会を支える国家の大黒柱であり「我が国が抱える課題を解決し、先進国としての地位を維持していくためには何よりも(中略)強化が不可欠」と指摘し、さらにデジタルインフラとして通信インフラからデータセンターまでを含めて把握することでデジタル産業の基盤と位置付けています。今月はこのデジタルインフラについて考えてみたい。

これからの経済社会全般を想定すると、デジタル化とデータの利活用が急務なことは衆目の一致するところです。そのためには急増する情報処理量と通信量に対応することが絶対条件となるので、デジタルインフラの強化が必須となっています。しかしながら日本では、通信ネットワーク(5G、6G,IOWN)、データセンター(ハイパースケーラー)、エッジノード(MEC)、IX(インターネット・エクスチェンジ)などの個別の設備やサービスの構築と研究は進んでいるものの、デジタルインフラを全体として把握して将来(例えば2030年)に向けた具体的な展望や整備方針を描くまでには至っていません。この点、例えばEUでは欧州委員会(EC)は今年3月、2030年までをデジタル化10年と捉え、それまでの実現目標を定めた「2030年デジタルコンパス」を発表しています。そこでは安全・高性能かつ持続可能なデジタルインフラの整備として以下の目標を示しているのが参考になります。

固定ギガビット通信の世帯カバレッジ100%

(2020年 59%)

 

5G世帯カバレッジ100%

(2021年 14%)

次世代半導体、プロセッサーのEU域内生産高、世界シェア20%以上

(2020年 10%)

気候中立・高セキュリティなエッジノードをEU域内に1万基配備し、ビジネスにほぼ遅延のないアクセスを保証

(2020年 なし)

2025年までにEU初の量子コンピューターを導入し、2030年までに量子情報処理技術で世界最先端に

(2020年 なし)

デジタルインフラとして通信インフラ(固定、5G)から情報処理(データセンター、エッジノード)まで、さらに次世代半導体のEU域内生産シェアを含めた目標はEUの安全保障まで取り込んだインフラ整備水準を表しています。日本では通信インフラの整備目標として総務省が「ICTインフラ地域展開マスタープラン3.0」(2020.12.25発表)を示して、モバイル通信サービスのエリア外人口の解消や光ファイバーの整備水準を明らかにしていますが、他方データセンターやエッジノードについては整備目標はもとより総合的な立地戦略などは現在のところ存在していません。規模の大きいハイパースケールデータセンターは1棟あたり数百億円以上の投資となるので、データセンター立地の拡大は年間で数兆円規模の経済効果が見込まれます。しかし、その立地には電力、情報通信、水道などの各種インフラが備わっていることが条件となるので基盤整備が必要です(例;千葉県印西地域)。その場合、今度は土地の制約から増設が困難となるという事情が生じています。

情報通信については日本では光ファイバー回線のインフラ整備が進んでいるので条件は整っているところが多いですが、課題は電力インフラの整備になります。データセンターでは複数系統の送電線が必要となりますが、それには精度の高い電力需要予測(即ちデータセンターの需要)が求められる一方で、データセンター事業者は電力インフラ整備計画がないと建設の判断ができず双方とも踏み出せない状況となっています。その結果、データセンターはインフラ条件が整っている大都市圏に立地が集中しているのが現状です。土地利用・確保の制約が厳しい上に災害等のリスクの高い場所に集まっているという問題が生じています。こうなるとデジタルインフラとして総合戦略を推進することが第一歩であり、通信インフラと電力インフラが連携したデータセンター立地戦略が必要です。そうでないと電力コストが高く、またグリーン電力が不足する日本からデータセンターがなくなってしまうことが危惧されます。EUのデジタルインフラ目標はこのことを明示的に意識したものとなっていることに注目しています。国際的なデータセンターの立地の前提として、データローカライゼーションを回避してグローバルなデータ流通を進めるDFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性ある自由なデータ流通)が求められる一方で、国家の安全保障や機密情報の保護のためデータセンターの国内立地を求める動きがあるのも事実です。そこで重要な要素が信頼性の有無であり、インフラの持つ新しい機能への信頼度です。通信ネットワークの技術的性能が超高速化だけでなく超低遅延の発揮にあり、それが新たなユースケースを生み出すことにつながっているので、データセンターやエッジノードを近くに置いてリアルタイム処理の性能向上を図ることはデジタルインフラに求める最大項目となっています。デジタルインフラで処理する情報の性格を見極めてデータセンターの所在を選定する時代を迎えています。

データ処理に関して処理量の増大に対応することは当然として、さらに現場にあるモバイル端末(IoTを含めて)との情報流通はリアルタイム性を要求することが多く、それが現場作業の安全性・効率性を高めますし、顧客接点での満足度を高めることになるのでデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進につながります。デジタルインフラの総合戦略、端的には情報通信インフラとデータセンター(エッジノードを含めて)の連携方策が喫緊の課題となっていることを認識すべきです。2030年までにはBeyond5G=6Gの開発・普及とIOWN構想が現実化しますので、デジタルツインコンピューティングなどのコンピューターパワーを活用したスマートシティや社会需給のシミュレーションなどにリアルタイムに応じられる通信インフラからデータセンターまでのインフラ連携が必要になります。日本の国際競争力の維持・向上のためには、今から特にハイパースケールデータセンター立地の国際的地位(2020.Q2末、米国38%、中国9%に次いで日本6%で第3位)を高める努力が求められます。この際、通信インフラと電力インフラ、併せて水道等の地域のインフラや土地利用の規制緩和など総合的で、それぞれの役所の利害、権益を離れた一元的な対応となることを期待しています。こうしたインフラ連携を進めておかないと個別の6GもIOWNも最大性能を発揮する機会を失うことになりかねません。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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