2021年10月28日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

povo2.0は、携帯料金プランの新たなモデルとして定着するか



KDDIと沖縄セルラーは2021年9月、新料金プラン「povo2.0」を発表、9月29日から提供を開始した。「君にピッタリの自由へ、一緒に。」をコンセプトとし、「auのオンライン専用ブランドpovoにおいて、月額基本料0円から開始し、お客さまのライフスタイルにあわせて10種類のトッピングを自由に選択できるオールトッピング『povo2.0』を提供」という説明である。あわせて、2021年3月より提供してきたpovoの名称を「povo1.0」に変更し、povo2.0開始にあわせ新規受付を終了している。

povo2.0は契約型のプリペイド

povoの市場投入にあたり、KDDIは報道発表の中で「お客さまがご自身のライフスタイルに合わせてカスタマイズできる、自由なプランが実現できました」としている。この「カスタマイズ」が従来の各社の料金プランの中で、できていなかったというよりは、正しくは「不十分だった」ということだと思われる。トッピングと同社が呼ぶ、サービスや機能の追加オプションは、従来のpovo(povo1.0)のセールスポイントであったが、これをさらに推し進めた形となっている。

【図1】povo2.0の概要

【図1】povo2.0の概要
(出典:KDDI報道発表(2021年9月13日)
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/09/13/5388.html)

利用者によるトップアップ(追加購入)は、交通系マネーと同種の運用形態である。データ利用であれば、残額が不足するたびに購入する形だ。ただし交通系マネーと違い、有効期限がある。これは期限付きのポイントと似ている。期限付きであるため、その期限までに使い切らないと捨てることになる(キャリーオーバーしない)。その意味では、提供側からすると「使い切らない分」も含め「販売時点で」収益確保できるメリットがある。

【図2】povo1.0で導入されたトッピング

【図2】povo1.0で導入されたトッピング
(出典:KDDI報道発表(2021年1月13日)
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/01/13/4909.html)

povo2.0の仕組みは、実は海外ではごく一般的なプリペイド携帯のプランと同様である。基本料金がなく、使いたい分の機能やデータ容量、通話かけ放題(海外では、通話分数などが一般的)を前払いする。国内では新しさを感じさせるが、世界的に見ると20年以上前からある、よくある形である。本人性の確認などが必要な契約型であるという点も、海外では特に珍しくはない。プリペイドというと、国内ではこれが犯罪の温床になるとの議論もあり、通信事業者は積極的な販売をしてこなかった。

海外ではプリペイドプランから携帯電話が普及

世界の携帯電話市場の過去を振り返ると、ほとんどの国で、プリペイドプランがその普及を支えてきた。与信の関係でクレジットカードを持てない顧客層が多い市場では、携帯電話を普及させるにはポストペイド契約のみではすぐに頭打ちになってしまうためである。

しかし、通信事業者の立場からは、契約数×ARPUをいかに増やすかが成長戦略の王道である。契約数が早期に頭打ちになった主要国では特に、プリペイドからポストペイドへ契約者を移行させる戦略を採る通信事業者が多く見られた。通信事業者にとって最もありがたい契約者は、「長期に」「高い支払い」をしてくれる顧客である。そのような顧客を多く抱えている通信事業者は、いかに顧客を逃がさないかが戦略の基本スタンスになるが、そうではない通信事業者の場合は、「短期で逃げてしまう」「支払いが安い」契約者でもいいからまずは数を増やし、その後彼らをいかに「上顧客」に育てていくか、を戦略の軸とするケースがよく見られた。

過去の例でいうと、例えば米Verizonはその高いブランド力を背景に上顧客の獲得・維持を優先させ、パケットシェアプランの導入で、同一アカウント内で複数回線を囲い込む戦略を採用し、「短期で乗り換える」「支払いが安い」利用者をそれほど追いかけなかった時期がある。一方で、ブランド力に劣る旧Sprintは、MVNOも活用しながら「短期で乗り換える」「支払いが安い」層に対してのアプローチも積極的に行っていた。

分離プラン時代ならでは

日本で何年も前から進められてきた消費者保護の取り組みの一部は、通信事業者による「契約者の長期囲い込み」が進みすぎており、複数の選択肢があるにもかかわらず自由な乗り換えが阻害されている、という考え方を背景としている。

そうした取り組みが契機となり導入された施策のいくつかが、端末代金と通信料金の分離であり、SIMロック解除の義務化であり、2021年10月からのSIMロック原則禁止である。「端末支払いの残債がある」かどうかと、「通信事業者との残りの契約期間がある」かどうかは切り離された。SIMロックがかかっていない端末なら、通信事業者を乗り換えても、端末を買い替えずに使い続けられる。そして、プリペイドSIMであれば、支払った分を使い切った後に同じ通信事業者で再度使うかどうかについての利用者のシバリ意識はより少ないだろう。

こうした背景からすると、契約型プリペイドをKDDIが投入したことは、同社が将来市場を「乗り換え自由」に近づくと見越しているとすれば、市場を先回りしたプラン投入だという見方もできそうだ。

しかし、通信事業者にとっては、コストに敏感ですぐに乗り換えたり、乗り換えの際の特典を頻繁に獲得したりするユーザーは、顧客獲得、顧客維持のコストに見合った利益確保が難しい。そのような通信事業者へのロイヤルティが高くない顧客は、経営効率の面からはそれほどありがたくない。それでも顧客に寄り添うという姿勢が、今回のpovo2.0の市場投入の背景にある。「契約してからお客にアプローチし続けるプランを、どうしてもやりたかった。お客との接し方を見つめ直した」(KDDI高橋社長)とのことだ。

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
以下ご覧になりたい方は下のバナーをクリックしてください。

  • 楽天モバイルの対抗としてはどうか
  • プリペイドの持つ煩雑さはどうか
  • 新たな市場を開拓するか
  • 「#ギガ活」は、ポイント戦略の変形

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

ITトレンド全般 年月別レポート一覧

2022 (2)
2021 (63)
2020 (61)
2019 (63)
2018 (78)
2017 (26)
2016 (25)
2015 (33)
2014 (1)
2013 (1)
2012 (1)
2010 (1)

InfoCom World Trend Report

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

ICR|株式会社情報通信総合研究所 情報通信総合研究所は情報通信のシンクタンクです。
ページの先頭へ戻る
FOLLOW US
FacebookTwitterRSS