2021年11月29日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

日本と欧州(EU)のブロードバンドの ユニバーサルサービス化の現状



1.はじめに

日本では、ブロードバンドのユニバーサルサービス化(以下、「BBユニバ」)の議論が総務省で行われている。世界に目を向けると、既に同様の取り組みを行っている国も多い。特に、欧州連合(EU)は2018年12月に発効した新電気通信法(「欧州電子通信法典(European Electronic Communications Code)」、以下、EECC)において、加盟国にBBユニバの導入を義務付けている。ドイツ、フランスなど多くの加盟国では、EECCの自国電気通信法への移植のための移行期間を経て、2022年以降にBBユニバ制度の本格的な運用が始まる。対する日本のBBユニバ議論の結論は、2021年末~2022年初頭に決着する見込みである。

日欧のBBユニバ議論の詳細を説明する前に、前提となる市場環境を確認しておきたい。日欧の有線ブロードバンドの整備状況は大きく異なっており、特に、FTTH(Fiber to the home)の普及度は日本と大半のEU諸国の間に顕著な差がある。図1はOECDが発表している全ブロードバンド契約回線に占めるフルファイバー回線(すなわちFTTH)の比率であるが、日韓が80%を超えて首位争いをする一方で、英、独は5%程度に過ぎない。フランスは英、独を大きく上回るが、それでも、FTTHは全ブロードバンド契約の1/3にとどまっている。このようなFTTH化の遅れについて、欧州では5G展開に必要なバックホール回線の整備に支障をきたすという認識も高まっており、英、仏などは「早急に整備しなければ世界に後れを取る」という危機感が強い。

こうしたブロードバンド市場環境の違いは、日欧(EU)のBBユニバ議論にどのような影響を与えているのだろうか。次節以降でその点を確認していきたい。

【図1】全ブロードバンド契約回線に占めるFTTH契約の比率(2020年12月)

【図1】全ブロードバンド契約回線に占めるFTTH契約の比率(2020年12月)
(出典:OECD Broadband Statistics.(2021.10.29閲覧))
(注) 棒グラフ中の横線は2018年末、白丸は2019年末の比率を示している。
スペインやフランスの伸びが大きいことが分かる。

2.日本のBBユニバ議論は大詰め

総務省がBBユニバ導入議論を行っているのは、「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会」(以下、「BB基盤研」)の場である。同研究会は2020年3月に開始され、2021年10月段階で15回開催されており、年末までにさらなる議論が予定されている。その間、2021年6月には中間取りまとめ(案)が諮問に付された。このBB基盤研を開催するに当たり、総務省は検討の目的を以下のように説明している。

[総務省の2020年3月27日の報道発表より抜粋]

「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」最終答申(令和元年12月17日情報通信審議会)において、ブロードバンド基盤について国民生活に不可欠なサービスの多様化への対応や持続的な提供を確保するため、「制度面を中心に専門的・集中的な検討を進めるための検討体制を設けることが適当である」とされたことを踏まえ、ブロードバンド基盤の在り方等について検討を行います。

ここで、「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」とは、総務省が2018年夏から2019年末にかけて行った、2030年頃を見据えた情報通信規制の大規模な見直し作業を指している。BB基盤研の中間取りまとめ(案)は60ページを超える大部であるが、総務省が同時に発表した概要編によれば、そのポイントは以下(1)~(3)のとおりである。一言でいえば、「FTTHとCATV(ケーブルブロードバンド)をユニバーサルサービスとして指定し、必要な場合には維持運用経費(ランニングコスト)を交付金制度(業界基金など)で支援する」ということである。ここで注意すべきは、(3)に明記されているように、現在ブロードバンドが提供されていない地域に新たに回線を敷設する場合のイニシャルコストは、交付金に加えて国や自治体による直接的な財政支援を検討すべきとしていることである。また、そのような新規敷設には、携帯ブロードバンドの活用が現実的であるとも指摘している。

(1)提供確保すべきブロードバンドサービス

  • Society 5.0時代を見据えるとともに、「新たな日常」においては、ブロードバンドサービスは不可欠。
  • ブロードバンドサービスの中で、その提供維持のために維持運用経費について支援を行う必要があると考えられる有線ブロードバンド サービス(FTTH, CATV)を提供確保すべきサービスと位置付ける。

(2)適切、公平かつ安定的な提供確保のための方策

  • 利用者利益を確保する観点から、いつでもどこでも誰もが有線ブロードバンドサービスを利用できるように、サービス提供主体に対し、適正な提供条件等を確保する規律を課す。
  • 有線ブロードバンドサービス提供主体のうち一定の基準を満たす者に対し、交付金制度により維持運用経費を支援。

(3)有線ブロードバンド未整備エリアにおけるブロードバンドサービスの提供確保方策

  • 維持運用経費の交付金による支援を行うとともに、整備費について地域の実情を踏まえた財政措置などの支援策を引き続き講じることで、有線ブロードバンドの整備を一層進める。
  • 残る未整備エリアをすべて有線ブロードバンドで整備することは困難であるため、 携帯ブロードバンドサービスの活用を検討。

なお、この中間取りまとめ(案)の諮問以降のBB基盤研(2021年9月~)においては、以下1~4など、重要な検討が引き続き行われている。

  1. 通信速度等の確保すべき品質
  2. 不採算地域に対する最終的なサービス提供の責務(ラストリゾート事業者の責務)
  3. 交付金による支援額算定方法
  4.  携帯ブロードバンドの具体的な活用方策

日本が上記のようにFTTHをBBユニバ対象として議論しているのは、その品質(速度など)が優れていることもあるが、整備率(エリアカバー率)の高さも理由である。その点について、BB基盤研の中間取りまとめ(案)では、図2のとおり「有線ブロードバンド未整備エリアの世帯数は2021年度末時点で約7万世帯(FTTH未整備世帯は約17万世帯)まで減少(99.9%が整備済)、携帯ブロードバンドは2023年度末にはエリア外世帯がゼロになる計画」と説明している。このように、日本のFTTH整備率は世界的に見ても非常に高い水準にあるが、その点は、EUなどの諸外国と日本のBBユニバ制度の比較を行う場合に押さえておくべき事実である。

【図2】総務省の日本のブロードバンドの整備状況に関する説明

【図2】総務省の日本のブロードバンドの整備状況に関する説明
(出典:総務省「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会」の中間取りまとめ(案)概要より抜粋
(同省は上図を「ICTインフラ地域展開マスタープラン3.0」から引用と説明))

続いて、FTTHの整備率、加入率が日本と大きく異なるEUにおいて、どのようなBBユニバ制度が導入されたのか説明する。

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
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  • EUは先行してBBユニバ制度を導入
  • 日欧のBBユニバの比較検証
  • まとめ

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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