「Google Pixel Fold」に見る高額スマートフォンの今後

最新スマートフォン「Google Pixel Fold」を購入
2023年7月27日、Googleの最新スマートフォン「Google Pixel Fold」が届いた(写真1)。同端末は、Googleの最先端の技術が搭載されている同社初の折り畳み型スマートフォンである。最新のスマートフォンに目がない筆者としては、非常に魅力的なスマートフォンだ。従来ならば、購入を即決するところだが、今回は見送ることも考えた。その理由は、同スマートフォンの値段が約25万円と高額だったためである。スマートフォンは、毎日気軽にポケット等に入れて利用するものだと考えている。一方、Google Pixel Foldの様な高額なスマートフォンになると「破損」や「故障」などのリスクを考えてしまい、気軽に持ち運んで利用することはできないと感じてしまったのだ。最終的には、妻から「職業的に買わないでどうする」と諭され、金額に恐怖しながらGoogle Pixel Foldをメインスマートフォンとして自費で購入することにした。
本稿では、一消費者として購入したGoogle Pixel Foldを約1週間使ったレビューを紹介するとともに、高額化が進展するスマートフォンの今後に向けた規制等の動向ついて考察していきたい。
【レビュー1】
折り畳みスマートフォンGoogle Pixel Foldの使用感
Google Pixel Foldで注目すべきは、やはりGoogle初となる新たなスマートフォンのフォームファクタ(形状)である「折り畳み」だ。ディスプレイは閉じた状態で、5.8インチのディスプレイが一つ、広げると7.5インチの内折ディスプレイが登場する(写真2)。5.8インチのディスプレイといえば、iPhoneであればiPhone 14やiPhone 14 Proのディスプレイ(6.1インチ)より若干小さい。また内折ディスプレイに関してもiPad miniのディプレイ(8.3インチ)よりも一回り小さい。純粋な比較にはならないが、iPhone 14やiPad miniユーザーの目線では、少し小さなスマートフォンとiPad miniの両方をポケットに入れて持ち運ぶことができるデバイスとなる。
2つのディプレイのなかでも特に注目されるのは、やはり7.5インチの内折ディスプレイだろう。内折ディスプレイは、文字通り7.5インチのディプレイを真ん中で折り畳んだものとなっており、その折り目は光の反射等で浮き出る。ただし、実際に動画等を視聴してみると、特に正面で観ている分には折り目の違和感は大きく感じられなかった(写真3)。
なお、折り畳み型スマートフォンのディスプレイや端末サイズには問題がないが、大きな課題として重量が挙げられる。同端末の重量は283gと非常に重い。参考として、iPhone 14のなかでも最も重いiPhone 14 Pro Maxが240gだ。折りたたんだ状態で片手操作する場合、その重さ故に長時間操作が難しい。今後、技術発展による小型化・軽量化に期待したい。
【レビュー2】
アプリのGoogle Pixel Fold対応
Google Pixel Foldは広げることで小型タブレットに変わるが、そこで注目すべきはアプリの対応になる。既に、Googleが提供しているYouTube、Gメール、Google Chromeブラウザー等のアプリがGoogle Pixel Foldに最適化されている[1]。一方、現状ではまだ多くのアプリは対応していないため、Google Pixel Foldでそうしたスマートフォン向けアプリを使うと全画面表示されない。(写真4)
なお、Google Pixel Foldに最適化されたアプリは増加すると予想する。Googleは2023年7月25日に、アプリストアにおけるアプリ・ランキングなどの評価基準に「大型スクリーンへの対応」を加えた(図1)。これにより、アプリ開発者は、従来のスマートフォンだけでなく、折り畳み型スマートフォンを含む大型スクリーンへの対応が求められるようになった。今後、様々なアプリがGoogle Pixel Foldに最適化されることが期待される。

【図1】Google、アプリ開発者に大型スクリーンへの対応を促す
(出典:https://android-developers.googleblog.com/2023/07/
introducing-new-play-store-for-large-screens.html)
高額スマートフォン購入先:
Googleストア? キャリア?
2019年10月に開始された通信料金と端末料金の分離もあり、キャリアによる端末値引きは限定的(最大2万円)なものとなった。さらに、GoogleのPixelシリーズの販売自体も対応するキャリアが少なくなった。筆者も、2019年10月に販売が開始されたPixel 4 XLを機に、Googleストアで端末を購入してきた。今回もGoogle Pixel FoldをGoogleストアで購入する予定であったが、数年振りにNTTドコモのオンラインショップで購入することにした。その大きな切っ掛けとなったのがスマートフォンの故障・破損時に修理や交換等をしてくれるサービス「端末補償サービス」である。
Google Pixel Foldを販売している国内キャリア3社は共に、端末補償サービスを提供している。Googleストアでも同様のサービスが米国、カナダ、プエルトリコで提供されているものの、日本では提供されていない(図2)。つまり、Googleストアで購入してGoogle Pixel Foldが故障した場合、高額な修理費を支払うか新しい端末を購入する必要がある。
キャリアの端末補償サービスでは月額数百円程度支払う必要があるものの、Google Pixel Foldを日常生活で利用することを考えると、安心感を満たすために必要不可欠なサービスと感じた。
なお、筆者は既にGoogle Pixel Foldを1週間で計3回(屋内外で)落としている。幸運にもモニター等の破損はなかったが、端末補償サービスに入っていることで、より安心してGoogle Pixel Foldを利用することが可能となった。
国内キャリアの販売価格:端末購入サポートプログラム
Google Pixel Foldはキャリアから購入することにしたが、次にこの高額なスマートフォンの支払い方法を検討する必要があった。まず検討したのが端末の返却を前提としたキャリアの端末購入サポートプログラムだ。
端末購入サポートプログラムでは、端末の返却を前提に約2年間の月額費用を支払うことで、実質端末負担額が約14万円に抑えられる(表1)。Google Pixel Foldを2年後に手放すことに問題なければ、約半額で入手することが可能となるのは魅力的である。
なお、最終的に筆者としては、やはり画期的なスマートフォンであることから購入後2年以降も手元に残したいと考え、これらプログラムを活用せず、24カ月の分割(月1万539円)で購入した。
米国キャリアに見るGoogle Pixel Foldの販売戦略
2019年10月に開始された通信料金と端末料金の分離により、日本では購入するスマートフォンを手元に残したい場合、「一括」若しくは「分割」で支払う必要がある。一方、海外キャリアを見ると、Google Pixel Foldの返却は前提とせず約半額で販売している。例えば、米国大手のAT&TやT-Mobile USでは、特定のデータプランに加入すれば、約半額でGoogle Pixel Foldを手に入れることができる[2](図3)。その背景として、米国では、日本の様な端末割引に関する規制はないことが挙げられる。これにより、米国キャリアは、端末割引による他社との差別化が可能となっている。また、ユーザーとしても高性能スマートフォンを比較的安価に購入できると同時に、その端末の能力をフルに活用するために上位プランへ移行するインセンティブが働き易くなっている。
高額化するスマートフォンと今後の規制
Google Pixel Foldは、同社初の折り畳み型スマートフォンとして注目されているが、既にSamsungやLenovo等のメーカーも同様のスマートフォンの販売を開始している。また、折り畳み型スマートフォン以外にも、巻き取り型スマートフォンのコンセプトモデルが発表されるなど、新たなスマートフォンの形が提案されている。一方、Google Pixel Foldに代表される折り畳み型スマートフォンは高額であり、巻き取り型も同様に高額になると想定される。
日本では「通信市場の競争」と「端末市場の競争」を促すために、それぞれの料金を法的に分離しているが、米国を含む大半の主要国ではその様な規制がない。通信と端末はモバイルエコシステム全体の発展を促す両輪の関係にあるためだ。日本においても端末割引に対する規制緩和の議論が始まっており、スマートフォンが高騰するなか、同議論がどの様に展開するか今後に注目する必要がある。
[1] https://www.forbes.com/sites/patrickmoorhead/ 2023/06/05/google-emphasizes-android-ai-large-screens-pixel-and-its-new-pixel-fold/?sh= 56a5a4c041ca
[2] https://www.t-mobile.com/news/devices/get-1000-off-the-pixel-fold-at-t-mobile-americas-network-leader、https://about.att.com/story/ 2023/google-pixel-fold.html
※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。
当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。InfoComニューズレターを他サイト等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。また、引用される場合は必ず出所の明示をお願いいたします。
調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。
ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら関連キーワード
中村 邦明 (Kuniaki Nakamura)の記事
関連記事
-
ブロックチェーンとどのように向き合うか ~地域活用の可能性~
- WTR No432(2025年4月号)
- ブロックチェーン
- 地方創生
-
世界の街角から:フランス パリ、リヨンへの旅 ~着物がつなぐ歴史と文化~
- WTR No432(2025年4月号)
- フランス
- 世界の街角から
-
より実効性のある公益通報者保護制度の確立に向けて
- ICR Insight
- WTR No433(2025年5月号)
- 国内
-
MWC2025に見る通信業界の転換点:“次のG”ではなく“次のAI”
- AI・人工知能
- MWC
- WTR No433(2025年5月号)
- イベントレポート
- 海外イベント
-
ビジネスフェーズへと向かうネットワークAPI ~日本の通信事業者はどのように取り組めるか~
- MWC
- WTR No433(2025年5月号)
- イベントレポート
- モバイル通信事業者(国内)
- モバイル通信事業者(海外)
- 海外イベント
InfoCom T&S World Trend Report 年月別レポート一覧
ランキング
- 最新
- 週間
- 月間
- 総合