シェアリングエコノミーによるCO2排出削減の可能性
![](https://www.icr.co.jp/newsletter/wp-content/uploads/2023/01/thum_renewable-energy-7143344_640-580x387.jpg)
新型コロナウイルス感染症をきっかけに、国連が提唱するSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の重要性が再認識された。特に、SDGsの中の「13気候変動に具体的な対策を」は、最近の異常気象や自然災害の増加も受けて注目度が増しており、CO2をはじめとする温室効果ガスの削減は政府・企業にとって重要な課題となっている。そのような中で、シェアリングエコノミー[1]はCO2排出削減につながるものとして期待されており、「スペースのシェア」と「モノのシェア」のCO2排出削減効果については本誌2023年1月号にて紹介した[2]とおりである。
以下では「スペースのシェア」「モノのシェア」のみならず、「移動のシェア」に含まれるカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果も含めて、最新の予測結果に基づいたCO2排出削減の可能性について述べる。
なお、ここで扱うのはシェアリングエコノミーの内の表1に示したサービスである。
カーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果予測
自分で自動車を購入して使用していた人がカーシェアを使用するようになると、無駄な利用を避けようとする意識が働き、必要な分だけ効率的に自動車を利用するようになるため、移動距離と燃料消費が減少し、CO2排出量が減少する。また、カーシェアで使用される自動車はCO2排出量が少ない電気自動車が多いため、電気自動車の利用が増えることによってもCO2排出量が減少する。
一方、自動車を使用していた人が、自動車の代わりにサイクルシェアを使って自転車で移動するようになると、自動車の燃料消費が減少してCO2排出量が減少する。
つまり、カーシェアとサイクルシェアの利用者を増やすことでCO2排出量を削減することができる。そこで、今後カーシェアとサイクルシェアの利用者が拡大していくことで、どの程度のCO2排出量を削減することができるのかを推計した結果が図1である。これはシェアリングエコノミーの成長における課題がすべて解決すると想定した場合の2032年度の市場規模予測[3]を前提として算出した値となっている。
CO2排出削減効果合計323万t-CO2は、小売業の年間排出量[4]330万t-CO2とほぼ同じである。
![【表1】スペース、モノ、移動のシェアの各サービスの説明とサービス例](https://www.icr.co.jp/newsletter/wp-content/uploads/2024/01/wtr417-20240115-yamamoto_t1-580x332.png)
【表1】スペース、モノ、移動のシェアの各サービスの説明とサービス例
(出典:情報通信総合研究所作成)
![【図1】2032年度のカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果](https://www.icr.co.jp/newsletter/wp-content/uploads/2024/01/wtr417-20240115-yamamoto_1-580x304.jpg)
【図1】2032年度のカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果
(出典:情報通信総合研究所「2023年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」)
InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
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スペースのシェア・モノのシェアのCO2排出削減効果予測
企業がシェアサービスを活用してCO2排出量を削減する方法
まとめ
※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。
[1] 個人等が保有する活用可能な遊休資産等(資産(空間、モノ、カネ等)や能力(スキル、知識等))を他の個人等も利用可能とする経済活動。
[2] 「資源消費とCO2排出の削減を通じて持続可能性に貢献するシェアリングエコノミー」(2023年1月10日)https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr405-20220110-yamamoto.html
[3] https://www.icr.co.jp/publicity/4737.html
[4] 小売業のCO2排出量の出典は国立環境研究所「産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)」の2015年データ。
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