2024.1.15 ICT経済 InfoCom T&S World Trend Report

シェアリングエコノミーによるCO2排出削減の可能性

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新型コロナウイルス感染症をきっかけに、国連が提唱するSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の重要性が再認識された。特に、SDGsの中の「13気候変動に具体的な対策を」は、最近の異常気象や自然災害の増加も受けて注目度が増しており、CO2をはじめとする温室効果ガスの削減は政府・企業にとって重要な課題となっている。そのような中で、シェアリングエコノミー[1]はCO2排出削減につながるものとして期待されており、「スペースのシェア」と「モノのシェア」のCO2排出削減効果については本誌2023年1月号にて紹介した[2]とおりである。

以下では「スペースのシェア」「モノのシェア」のみならず、「移動のシェア」に含まれるカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果も含めて、最新の予測結果に基づいたCO2排出削減の可能性について述べる。

なお、ここで扱うのはシェアリングエコノミーの内の表1に示したサービスである。

カーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果予測

自分で自動車を購入して使用していた人がカーシェアを使用するようになると、無駄な利用を避けようとする意識が働き、必要な分だけ効率的に自動車を利用するようになるため、移動距離と燃料消費が減少し、CO2排出量が減少する。また、カーシェアで使用される自動車はCO2排出量が少ない電気自動車が多いため、電気自動車の利用が増えることによってもCO2排出量が減少する。

一方、自動車を使用していた人が、自動車の代わりにサイクルシェアを使って自転車で移動するようになると、自動車の燃料消費が減少してCO2排出量が減少する。

つまり、カーシェアとサイクルシェアの利用者を増やすことでCO2排出量を削減することができる。そこで、今後カーシェアとサイクルシェアの利用者が拡大していくことで、どの程度のCO2排出量を削減することができるのかを推計した結果が図1である。これはシェアリングエコノミーの成長における課題がすべて解決すると想定した場合の2032年度の市場規模予測[3]を前提として算出した値となっている。

CO2排出削減効果合計323万t-CO2は、小売業の年間排出量[4]330万t-CO2とほぼ同じである。

【表1】スペース、モノ、移動のシェアの各サービスの説明とサービス例

【表1】スペース、モノ、移動のシェアの各サービスの説明とサービス例
(出典:情報通信総合研究所作成)

 

【図1】2032年度のカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果

【図1】2032年度のカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果
(出典:情報通信総合研究所「2023年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」)

スペースのシェア・モノのシェアのCO2排出削減効果予測

「スペースのシェア」「モノのシェア」を通じて既存の建築物やモノの利用が増えると、新規の建築やモノの製造が必要なくなり、その分のエネルギー消費が減少するため、エネルギー消費に伴うCO2排出(石油や石炭の燃焼等によるCO2排出)量が減少する。さらに、「スペースのシェア」で既存の建築物をシェアして利用すると、新たな建築物の減少により不要となる建築物も減るため、建築物の解体で生じるゴミが減少するので、廃棄物処理によるCO2排出量も減少する。同様に、「モノのシェア」で衣服等のモノをシェアして利用すると、新品の購入の減少により所有する数も減るため、消費者がゴミとして捨てる衣服等が減少するので、家庭ゴミの処理によるCO2排出量も減少する。

これらの効果を推計した結果を図2に示した。図1と同様に、シェアリングエコノミーの成長における課題がすべて解決すると想定した場合の市場規模予測を前提として算出した値となっている。

CO2排出削減効果合計は457万t-CO2であり、前述のカーシェア・サイクルシェアのCO2排出削減効果323万t-CO2と合わせると780万t-CO2となる。これは日本の航空輸送部門の年間排出量[5]804万t-CO2に匹敵する削減効果となる。航空輸送部門は日本の中でもCO2排出量が多い部門であり、それと同程度の量のCO2を削減できるというのは非常に大きい効果だといえる。

企業がシェアサービスを活用してCO2排出量を削減する方法

企業にとってSDGs、中でもCO2排出削減は重要な要素となっており、資金調達を行う際にもCO2排出削減に対する取り組み度合いを問われるといったことが考えられる。これに対して、上記で示したようなシェアサービスのCO2排出削減効果は、排出削減の有効な手段として活用することが可能である。

「スペースのシェア」については、テレワークを行う際に必要な人数・時間分だけワークスペースをシェアして利用することや、自社で所有している会議室や駐車場をスペースのシェアサービスに登録して、他の企業や個人に使ってもらうことでCO2排出削減に貢献できる。

「モノのシェア」については、オフィス家具等を必要な分量・時間だけシェアして利用することでCO2排出削減が可能である。

カーシェアについては、自前の営業車両を廃止してカーシェアを活用することで、効率的な自動車利用を行い、CO2排出削減に貢献することができる。また、社用車を使用していない時間に他の企業や個人に使ってもらうことでもCO2排出削減に貢献できる。

サイクルシェアについては、近隣の営業活動等において自動車ではなくサイクルシェアを利用することでCO2排出削減が可能である。

まとめ

以上では、「スペースのシェア」「モノのシェア」「移動のシェア(の内のカーシェア・サイクルシェア)」と幅広いシェアサービスがCO2排出削減に利用できること、そしてその効果の予測を具体的に示し、企業による活用方法について述べた。企業のシェアサービス利用におけるCO2排出削減効果の具体例については、「地方銀行が自前の営業車両を廃止しカーシェアを活用」と題したシミュレーション結果が「2023年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」(https://www. icr.co.jp/publicity/4799.html)で確認可能である。興味のある方は是非購入されたい。

[1] 個人等が保有する活用可能な遊休資産等(資産(空間、モノ、カネ等)や能力(スキル、知識等))を他の個人等も利用可能とする経済活動。

[2] 「資源消費とCO2排出の削減を通じて持続可能性に貢献するシェアリングエコノミー」(2023年1月10日)https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr405-20220110-yamamoto.html

[3] https://www.icr.co.jp/publicity/4737.html

[4] 小売業のCO2排出量の出典は国立環境研究所「産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)」の2015年データ。

[5] 航空輸送部門のCO2排出量の出典は国立環境研究所「産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)」の2015年データ。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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