海底ケーブル戦略を巡る欧州の模索

BEREC(the Body of European Regulators for Electronic Communications)は2023年12月に国際海底ケーブルの認証枠組みに関するレポート案を発表した[1]。EUではケーブルコネクティビティ増設と安全性向上の観点から、海底ケーブルに関する制度の見直しに向けた調査を行っている。現在、海底ケーブルの認証手続きは国ごとに異なっており、加盟各国の規制当局の団体であるBERECは、各国の調査結果を取りまとめた。以下では、その一部と背景を紹介する。
海底ケーブル設備
海底ケーブル設備のバリューチェーンは、以下の要素に分かれる(表1)。各要素とも参加するプレーヤー数は限定的である。

【表1】海底ケーブルシステムのバリューチェーン
(出典:BERECおよびSubmarine Telecoms Forum,
2023/2024 Industry Report, Issue 12(25 October 2023)の公開情報をもとに筆者作成)
所有構造
海底ケーブルの敷設と運営は従来、通信事業者のコンソーシアムが保有、投資を管理し、国内の小売りビジネスを満たすために、卸売りや小売りレベルの第三者向けに販売していた。第三者としてはコンテンツプロバイダーも対象であった。
しかしこの10年間はコンテンツプロバイダーが海底ケーブルの主要な所有者となりつつある。彼らはECNSプロバイダーから容量を購入するだけでなく、独自の海底ケーブルシステムの運用により、従来の都市間接続ではなく、自社のデータセンターとの接続に重点を置き、運用コストを最小限に抑える場所を優先し、地上接続への依存度を下げている。
世界のケーブルの主要な保有者を見ると(図1)、2016-2020年の期間についてはコンテンツプロバイダーと中国の通信事業者が優勢だが、それまでの2012-2016年ではコンテンツプロバイダーは上位10位にも入っていなかった。しかしGoogleとFacebookは後半5年の間にトップに躍り出ている。

【図1】新規ケーブル保有の世界市場リーダー
(出典:BERECワークショップにおけるPwCプレゼンテーション、2023年9月 https://www.berec.europa.eu/system/files/2023-09/PwC.pdf)
2019年から2023年にかけて、コンテンツプロバイダーなどハイパースケーラーが、新規サービス開始の海底ケーブルシステム総数の23.5%を牽引した(図2)。2024年から2028年にかけては、計画されているシステムの14%がハイパースケーラーによって推進されると予想される。今後の市場トレンドは、これまでの所有シェアよりも現行の投資動態に現れるとみてよい。
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海底ケーブルを巡る戦略
※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。
[1] BEREC, Draft BEREC Report on the general authorization and related frameworks for international submarine connectivity1, December 2023
https://www.berec.europa.eu/en/document-categories/berec/reports/draft-berec-report-on-the-general-authorization-and-related-frameworks-for-international-submarine-connectivity
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