2021年6月11日掲載 ICT経済 ICTエコノミーの今

SDGsの多面性とシェアリングエコノミー -2021年シェアリングエコノミー調査報告 第5回-



2021年シェアリングエコノミー調査報告の第5回は、SDGsへの貢献を取り上げる。

[前回の記事]
社会的孤立を防ぐシェアリングエコノミー
-2021年シェアリングエコノミー調査報告 第4回-

(シリーズ一覧はこちら)

前2回の報告では、シェアリングエコノミーが大きな経済的価値を生む背景に、幸福度の増進と社会的孤立の防止があることを示した。このように様々な社会課題の解決に貢献するのがシェアリングエコノミーなのである。これは最近注目されているSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))に当てはめるとよりはっきりする。SDGsは17の多面的な目標が掲げられており、「14海の豊かさを守ろう」といった自然保護関連から、「16平和と公正を全ての人に」といった制度関連まで多岐に渡っている。一方、シェアリングエコノミーは、多様なサービスを含んでおり、種々の人・モノ・カネ・情報を広範な主体の間でシェアして活用する。自然保護や制度設計に関連するサービスもあり、間接的な影響も含めるとほぼ全てのSDGsに貢献するといえるだろう。中でも直接的な貢献効果は図1のようなものがある。

図1 シェアリングエコノミーのSDGsへの貢献効果の例

図1 シェアリングエコノミーのSDGsへの貢献効果の例
出典:「2021年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」(情報通信総合研究所)より作成

ここでは、多様なSDGsにシェアリングエコノミーがいかに貢献しているかを示すために、数ある貢献のうち代表的な項目(赤フォント部分)について、個人向けアンケート[1]を用いて定量的に効果を明らかにした。

失業回避と働きがい獲得の効果

シェアサービスはそもそも隙間時間を使うもので大きな収入源にはなりづらいとみられる傾向があるが、実際は、シェアサービスによって失業を免れた人がいて、働きがいを感じることで生産性を上げている人がいる。つまりは経済成長に貢献しているといえるだろう。

図2は、シェアリングエコノミーによって失業を回避できた割合、働きがいを感じられるようになった割合を示したものである。「8働きがいも経済成長も」に関連する設問であり、シェアサービス[2]提供者のうち、それぞれyesと回答した割合を示している。

図2 「8働きがいも経済成長も」に関連する設問の回答割合

図2 「8働きがいも経済成長も」に関連する設問の回答割合
(シェアサービス提供者の中で当該設問に該当すると回答した人の割合)
出典:「2021年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」(情報通信総合研究所)

これら2項目に対して、yesと答えた割合は共に2割を超えている。シェアサービスを提供する人には、そもそも失業していない人、働きがいを感じている人がいることを考えれば、2割という数字はそれなりの大きさだと言えるであろう。

移動の利便性向上と地域間交流拡大の効果

シェアサービスは人々の移動の利便性を向上させることで、長く住み続けられる街づくりに貢献する。今回の調査では、人の移動に関するシェアサービス[3]利用者の35%以上が「移動手段を確保できるようになった」「安価に移動できるようになった」と回答した。また、フードデリバリーや買い物代行等を含む「移動(その他)」サービス利用者の3割強が「買い物のための負担が減った」と回答した。

また、全シェアサービス提供者・利用者のうち都市周辺部・農村部間の交流が増加した割合[4]が2割となっている。シェアリングエコノミーには地域間交流を活発化させる効果があることが確認された。

図3 「11 住み続けられる街づくりを」に関連する設問の回答割合

図3 「11 住み続けられる街づくりを」に関連する設問の回答割合
(シェアサービス利用者又は提供者・利用者の中で当該設問に該当すると回答した人の割合)

新品購入減少とゴミ減少の効果

会議室、服、自動車等をシェアして使うことは、新品の購入減少につながり、資源の有効活用に貢献するといえる。また、新品の購入減少はゴミの減少につながるが、これに加えて不用品をモノのシェアサービスで売却したり、他の人にシェアしたりすることでもゴミの量が減少する。今回の調査ではスペース・モノ・移動のシェアサービス利用者のうち、25%以上が「新品購入が減った」「ゴミの量が減った」と回答した。持続可能な生産・消費形態に合うライフスタイルへの変化を、シェアサービス利用者の4人に1人にもたらしたといえる。

図4 「12 つくる責任つかう責任」に関連する設問の回答割合

図4 「12 つくる責任つかう責任」に関連する設問の回答割合
(シェアサービス利用者の中で当該設問に該当すると回答した人の割合)

以上みてきたように、シェアリングエコノミーはSDGsに多面的に貢献する。シェアリングエコノミーは様々な人・企業を結び付けるので、社会的ネットワークを強化することによる間接的な持続可能性への貢献も大きいといえるだろう。新型コロナウィルス感染症による危機を受けて、持続可能性を追求する重要性が再認識された今、シェアリングエコノミーを多方面でうまく活用することが求められる。

今回取り上げた調査結果の詳細は、「2021年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」として販売している。市場規模予測、新型コロナによるユーザの増加の動向、ユーザの特性やシェアサービス事業者との連携のメリット等を記載している。

第6回は他産業への経済波及効果を取り上げる予定である。

リンクバナー「2021年シェアリングエコノミー調査報告書・データ集」

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(参考)シェアサービスの説明とサービス例

(参考)シェアサービスの説明とサービス例

[1] 調査手法:Webアンケート調査(プレ調査、本調査の2段階)、調査対象:調査会社のWebモニター、20代~60代の男女、調査時期:2020年10月14日~26日、有効回答数:プレ調査29,949、本調査2,613。

[2] スペース(民泊)、移動(相乗り)、移動(その他)、スキル(対面)、スキル(非対面)が該当する。各サービスの説明とサービス例は巻末の参考に示している。

[3] 移動(カーシェア)、移動(サイクルシェア)、移動(相乗り)が該当する。

[4] 都市部と農村部の間でマッチングが生じた割合とマッチング後交流が続いた割合の合計。

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