2020年9月9日掲載 ITトレンド全般 ICR研究員の眼

幻のMWC2020、変わる世界の通信業界(5)日本勢の存在感



新型コロナウイルス感染対策のため、開催中止となった「MWC2020」をネタに行った鼎談の最終回。

<出席者プロフィール>

クロサカタツヤ 氏
株式会社企 代表取締役、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授
通信・放送セクターでの経営戦略、事業開発を中心としたコンサルティング、官公庁プロジェクトの支援等、幅広く手掛ける他、総務省等の政府委員を務める。
近著『5Gでビジネスはどう変わるのか』(2019年)

堀越 功 氏
日経BP 日経クロステック 先端技術 副編集長 
メディアの立場から、世界の情報通信を世の中に伝え続けてきた、屈指の存在。
日経クロステック(オンラインメディア)「堀越功の次世代通信羅針盤」にて最新動向を連載中。

岸田重行
株式会社情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 上席主任研究員
情報通信に特化したリサーチ・コンサルティングの立場から、長く世界のモバイル通信を中心にフォロー。MWCには、1998年より(その前身「GSM World Congress」に)参加。講演、寄稿、出演等多数。 (研究員紹介)

 

「幻のMWC2020、変わる世界の通信業界(4)」のつづき。

13. 日本勢の存在感

堀越あと、別のトピックとして、日本勢の存在感っていうのが、ここ数年出てなかったなあ、と。

クロサカうーん。

堀越メイン所で言うとソニー、ドコモ、NEC、この辺ですよね。毎年出している企業は、もうそのくらいしかなくなってしまったという感じもします。あとは楽天ですか。今年はドコモ単独で1月にプライベートショーを国内でやっていましたけども、あれの良い要素をMWCに持っていけばそれなりに、存在感は出せたと思っていました。

MWC2019 NECブース

MWC2019 NECブース

 

クロサカうん。

堀越あとドコモの吉沢社長がキーノートに出る予定だったんですよね。それで日本の存在感を出せたんじゃないかなあと思っているんですけど、残念ですね。

クロサカ逆に、あれですね、あのタイミングでドコモはオープンハウス出来てて良かったですよね。

岸田そうですね。ドコモのオープンハウスの集客といい、盛り上がりといい、出てきた展示物の中身も良くて、あそこへ出てきているものを、今回のMWCでやったら、ソリューションレベルでよそと比べられたんですよね。

堀越うんうん。

クロサカそうですね。

岸田で、まあ『勝ち負け』って単純に言い切らない、基準が何ともですけど、ただ、日本が、実は結構ソリューションを作る力があるんじゃないか、と。この間のドコモのあれを見て、凄く思ったんですよね。あとは、作るまでは良くて、次の広げる所を「じゃあどう広げていくんだ?」みたいな話かも知れず。

クロサカ正直、看板を掛け替えた方が良いんじゃないか、とも思うんですねぇ。諸外国の通信事業者もそうですけど、通信事業者がソリューションを出すことの、MWCにおける分かりにくさってあるじゃないですか?

堀越ありますね。

クロサカ「通信事業者は買い手だよね?」っていう。いやいや、買い手っていうだけじゃなくて、交渉力も含めてソリューションなんですよ、っていう『分かりにくさ』があるので、

岸田そうですね。

堀越そうですね、まあ、「日本は5G、1年遅れ。」ってよく言われますけど、『ソリューションを耕す』って面だとまだ遅れてはいない。

岸田全然遅れてないですよね。

MWC2019 NTTブース

MWC2019 NTTブース

 

堀越ええ、同じようなペースだと思うんですよね。

クロサカ勿論先行した人へのリスペクトは忘れないようにしたいですけれど、まあここ1年の先行に関しては、過大評価しなくていいんですよ。それこそ本当に5Gが『ロングジャーニー』なんだとすると、これが「3年、4年遅れた」って言うと大分違いますけど、まだNSAの1年ですからね。もちろんそれとて、「キャッチアップ出来るのか?」って言うとそんな簡単じゃないですし、多分、やっぱり韓国・アメリカの最初の躓きと、同じ事を我々は経験をしなければいけないはず。そう考えると、やはり吉澤社長は日本代表として喋っておいた方が良かったよなあ…。

堀越日本勢の、その存在感の話だと絶好の機会だったと思うんですけど。

クロサカそうですね。

堀越まあソニーモバイルとかは、製品自体は、カメラにガチャンとする5Gスマホと、やっぱりニーズ掴んでいるとは思いますけども。あと、NECもOpen RANの文脈でいろいろな経験もしている中で、色々、キーワードはあったかと思っているんですけど。

MWC2019 ソニーブース

MWC2019 ソニーブース

14. 大化けするもの

クロサカ個人的に関心を持っていたのが、NECのファイバーセンシング。

堀越ああ。

クロサカあれは、化ける可能性があると思っています。5G≒ファイバーだとすると、ファイバーセンシングもこれから重要になるんじゃないかなという気がするんですよ。ああいうものほど、実は、社会的責任とか、パーパスに近いものの1つになって行くかなあと思っていて。

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(中)と、 日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(右)、 ICR 上席主任研究員 岸田重行(左)

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(中)、
日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(右)、
ICR 上席主任研究員 岸田重行(左)

 

岸田そうですね。

クロサカまあ言ってしまえば『壮大な裏技』なのかもしれませんが、ネットワークがそこにあるっていう事の意味を、ある意味凄く分かりやすく説明していると思うんですよね。そこに光ファイバーケーブルがあって、誰かが見ててくれているっていう事なので。

岸田ああいうのを見ると、自分のイメージは『地図情報』なんですよね。広い意味で。まあそりゃあもう、ゼンリン、Here、TomTomと色々こう、ある訳ですけど、その未だに自分がまだそうかな?と思い続けられるのは「地図が化ける」と。もっと言うと、まあHereなんかは、地図がプラットフォームです、という言い方しますけど。今はまだ、何となく、今のグーグルマップは、周りの人がまだ扱い切れていないという感じがしているんですけど、あれが、ステップがもう1つ2つ先へ進むと、地図が動的にどんどんデータを溜めていく、処理していく基盤になったら、地図データはもっと化けますよねえ。

クロサカそうなんですよねえ。

岸田その中にいっぱい、センシングもそうなんでしょうし、それこそ、アメリカのCBRSでのジェネリックアクセス。「ここの場所でこの帯域は今使ってないから、使いたい人は今使って良いぞ」みたいなデータベースの運用はこれから始まるんですけど、あれだって、空間と電波の関係で、やはり場所に紐づいていて。動的に紐づいてるというところは、もうここまで来ると多分LTEでは無理。5Gの容量が無いと無理。

クロサカうん。

岸田そういう、「LTEでは足らない」って言うことに対して、今ある色んなアプリとかだと体感出来ないんですけど、どこかで1個、そういうものが出来ると「ああ、そこLTEでは足らんわ」みたいになって、それが『5Gニーズ』っていう側に来るのかな?どうなのかな?っていうのは思いますけどね。

堀越物流含めたDXには必ず必要になりますし、そのセンシング含めた、ユニバーサルな、ねぇ、その後『化ける』って可能性はありますよね?

岸田ドローン管制とか、もちろんクルマもそうだし、V2Xもそうだし、やっぱりその、『サイバーとリアルの何が違い?』っていうことで言えば、リアルには場所がリアルにあって、物理的にそこは厳然として存在します、と。デジタルツインみたいな話はもう、リアル側は場所はもう完全にアドレスがある訳ですからし、そこ自体は変えられないですからね、地球上でやっている以上は。

15. 通信業界の枠組みが変わる

クロサカそうなんですよねぇ。やや強引に、楽天的…じゃなくて、楽観的な事に話を振ろうとすると、今回の2020のバルセロナMWCが無くなった事によって、多分これまでの通信産業やインダストリーの枠組みを超える事が可能になると思うんですよね。

堀越なるほど。

クロサカで、多分我々はその契機にしていかないと、逆につまらない方向に行っちゃう気がするんですよ。たとえば既存の枠組みの中で考えれば、来年に向けて、優勝劣敗はハッキリするし、強かった人達のモチベーションは下がるし、そうして一度沈みながら何とか頑張って自分たちの『存在理由』を改めて探しに行こう、みたいな事が必要かなと。それこそMWCの『ロングジャーニー』が始まるというような。

堀越うーん。

クロサカで、それはそれで営みとして必要なんですけれど、やっぱり『テレコム』っていうフレームワークの外側に、まだ見えていない5Gの可能性があるという所に、視点を無理やり持ち込んで行かないと、結局冒頭からの「4Gをキャッシュカウにすりゃ良いじゃん」っていう話も、解けないままになってしまうと思うんですよね。『4Gキャッシュカウ説』ってやっぱり自分でも言いながら、「結構辛いな」と思っていたんですよ、正直。

堀越うん。

クロサカこれから特に日本、これこそ実は日本がもっと発信するべき事かも知れなくて、日本ぐらいピカピカの4Gを作ってしまったら、『皆4Gで十分なんですけど』状態っていうのを、誰も実はまだ言語化していないじゃないですか。国際的に理解出来るものとして。

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(左)と、 日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(右)

クロサカタツヤ 氏(左)、堀越 功 氏(右)

 

堀越うーん。

岸田普通に、200Mbps出ちゃうんですよね。海外のは全然違うんですよねえ、桁が1個違うんでねえ。

堀越ええ。良過ぎるんですよねえ…。

岸田それこそ通信方式の世代が1個違うくらいの感覚に近いですかね?まあ1個まで行かなくても0.6か0.7個くらい違うんですよね、サービスクオリティーが。まあそれだけが違うのに毎年総務省で内外価格差調査で通信料金の比較をするっていうのはどうか?って、そういうのもありますけどね。

クロサカですよねえ(苦笑)。

岸田まあそれは別としても、もうMWCは、モバイルから始まってテレコム全体へ、と来ている訳ですけど、テレコム縛りみたいな話を取り外しに行かないと、という場面なんでしょうね。

堀越うーん…。ちょっと前の岸田さんの話の中で、結局WAPも含めてこの業界の人ってあの、結局他力本願だったっていう、

岸田うん、作れてないって思うんです。自身で。

堀越ええ、ええ。それは、結構言われてみると確かにそうだ、と。で、こっちはテレコムの外にオポチュニティがいっぱいある、けれども、それを本当に「自らで流れを取れるのか?」と言うと、経験則から言ってやっぱり厳しいなあっていう感じも今ちょっとしてきたんですね。

岸田あの、よく思う事なんですけど、こうやってヨーロッパのイベントで、ヨーロッパの人達がICTで何かを作ってきたっていうので言えば、「方式で世界を制覇した」とか「端末で世界を制覇した」とかというのは、いけてるんですよ。ノキアも端末で世界を制覇したのはGSM方式だったからで。

堀越元々MWCという名前でなく『3GSM』ですよね?これは。

岸田そうなんですよ。もとはGSMコングレス。そのあとに3GSMと名前を変えて。第2世代のGSMで世界制覇して、その資産で食っている、というか。あの時に世界を制覇したものが、今、大英博物館ですか?みたいな(笑)。

堀越それは、はっはは。

岸田ぐらいの感じだと思うんですよね。

クロサカうん、うん。

岸田第2世代のGSMでという話がいったん区切りを迎えるとして、じゃあ、ここから業界としてどう動くのか?とか、もしくはプレーヤーとしてとか、もしくはあの、まあエコシステムの中でもその存在感を各企業がどう出していこうかの中での、その宗主3社、みたいな話も、今後どうなって行くんだ?みたいな。パワーバランスと言うか、そういうものの中で、次の1歩をGSMAがどっちに舵を切ろうとするかは、結構大事ですね。

堀越あのGSMの話で随分感じましたけど、GSMが世界制覇したのって欧州勢の国の長とか?そういう、

岸田そうです。

堀越はい、あの標準化するときの仲間作りの巧みさ、政治力ですよね?

岸田はい。ヨーロッパだから。

堀越で、逆に言うと、ヨーロッパの強味はそこしかないんじゃないかなあ、とも思いますね。

岸田今は、逆にそれは弱味になっちゃってます。     

クロサカGSMA名前変えた方が良いですね。

堀越『GSMアソシエーション』ですからね。

クロサカ『MWCアソシエーション』にした方が良いですね。MWCA…なんだかYMCAみたいな。ヤングマンがいるかはさておき。

岸田ふふふ。

堀越しかもモバイルワールドコングレスとはもう呼ばなくて、正式名称がMWCですよね。

岸田もう、言わなくなったんですよね。モバイルだけじゃない、と。CESっぽくやりましたよね。

堀越ええ。そうなんですよね。

岸田CESっぽくなってきましたし。

堀越それはそうですねえ、ちょっと過去の、大英博物館的なとこが凄いメークセンスですね。そうか、その感じ凄くありますね、このイベントは。

クロサカその大英博物館でさえ、エジプトから「返せ。」って言われて、いろいろ返し始めてるんですから。

岸田はは。

堀越そうですね。もう1回立ち止まって、・・・まあこれだけ肥大化したっていうのは強みではあるので、すると「次に繋げられるか?」と、突き付けられた『課題』ですね?

クロサカですねえ。

16 MWCにとってエッジ・コンピューティングは守り

堀越あと今年のMWCでは5GのSA化を含めた流れを見たかったんですけど。そのひとつとしてエッジの持ち方で色んな提案が出てくるんじゃないかなあという注目はしてたんですね。

岸田ええ。

堀越昨年のAWSがVerizonと提携した話も、グーグルも何か発表・提携を予定していたっていうあたりですね。ちょっとその辺のね、まあエッジはどうなんですか?っていうのはSA化と密接なことだと思うんですけど、そこがねえ…まあ答えは1つじゃないんだと思うんですけども、陣営分けとかですね、そういうのを見たかったな、というのが個人的にありました。

岸田MWCと言えばこの会場で、『エッジ』というマーケットチャンスを、『守りきれるか、作りきれるか』ですね。

堀越そうですね。例えば、SKテレコムでいえば、こういう提案を、エリクソンかノキアと一緒にしました、とか。いやいや、こちらはAWSと組んで、とか。

クロサカうん。

岸田で、何だろう、問いの立て方次第なんですけども、『エッジ』は、自分の中では大きく分けるとやっぱり3つ位の軸が混ざっている『交差点』と言う感じがしていて。 1つは、5Gのバリューって『5G自体じゃなくてエッジなんじゃね?』ぐらいの話が来て、

岸田重行

岸田重行

 

堀越ええ。

岸田でもう1つは、エッジは『テレコム vs IT byネットITジャイアント=OTTプレーヤー=プラットフォーマー、の闘い』。特に通信事業者、通信業界はベンダーも含めて。

堀越うん。

岸田MWCの人達 対、MWCにはそんなにいない、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、の闘い。

クロサカはい。

岸田もう1つは、さっきと軸を変えるだけですけど、やっぱり『ここ対アメリカ』みたいな軸、だと思うんですね。

クロサカうん。

岸田でその、どれの軸を取っても、『エッジ』はMWCの人達からすると、『守り』なんですよ。『攻め手』ではないんですよ。

堀越『守り』ですねぇ。

クロサカそこが今のオペレーターの悩みどころだと思っていて。どう考えても設備の共用化が進んでいくトレンドの中で、『エッジ』を含めたネットワーク・トポロジーとかネットワーク・アーキテクチャーのデザインが、オペレーターの差別化要因と言うか、存在理由になって行くはずなんですよね。

堀越うん、うん。

クロサカネットワークの品質≒エッジの品質になっていくので、そこ競争のポイントが変わるよ?っていう事を、皆、理屈ではわかっているんだけれども、打ち方、設備投資の仕方、需要の喚起の仕方が、皆分からない。

堀越分かんないですねえ。

クロサカで、需要動向を知っているのが、クラウドベンダーなんですよね。なので、クラウド屋さんが、今ちょっとずつ、自分達が使っているサーバーファームの1歩外側に張り出し始めている。

堀越張り出し始めて『浸食』を始めている感じですよねえ。AWSのWavelengthとか。

クロサカだとすると、戦い方は1つで、キャリアはサーバ側ではなくエンドノード側にエッジをつけなきゃいけないんですよね。ところが「本当のエンドノードこそ、共用化出来るんじゃないか?」っていう事と、オープン化を睨みながら、どういう風に、そこは、誰が何を以て設計するかっていうのと、せめぎ合いの世界なので、多分、戦局が読めないという状態に皆入りつつ…。

岸田何か違うゲームなんですよね?

クロサカうん。

岸田プレーヤーの顔は、多分企業名は、一緒なんですよ。ただ何だろう、それこそ関ケ原で「お前寝返るのか?」みたいな場面すら有り得る、そういうのがまあ局所、局所で多分あるんでしょうね。

堀越なので、ここ今もう1回展示会で、多分、表にはあんまり出てこないですが、いろんなプレゼンの中の一部でこういうヒントが出てきたりするのを、まとめて横串で色々分析するのに非常に適している。多分2年後位のことだと思うんですけど、何しろそれが見えなかった、「見えなくなってしまった」というのが、心残りであります。

クロサカ一方で、今回コロナが無かったとして、本当にその『戦局』というか闘いの最前線、ここで切り取って持ってくる事が、このエコノミーというか、この人達に、GSMAも含めて出来るか?っていうと、「やや、微妙」っていうのが僕の印象です。

堀越うーん。

クロサカ例えば先程の、そのハイパースケーラーであれば、もしかするとお付き合いで、と言って来てくれるかも知れない、まあそれも分からないですけど、もう、中間レイヤーで、例えば「エクイニクスがPacket社を買った」みたいな動きって、実はサーバ側とエンドノード側のどちらから見ても一番刺激的な話だと思うんですね。

岸田キモイですよねえ。

クロサカで、『エッジ』の本当の最前線ってそこだ、と。

堀越そこですね。

クロサカで、じゃあエクイニクスを引っ張り出してきて、こう、MWCで、「あなたのエッジ戦略を見せて下さい。」って言ったらエクイニクスは「金を積まれてもお断り」って多分言うと思うんですよね。逆に、じゃあハイパースケーラー側で、自分達で出来るかって言うと出来ないし、こっちの人達はこっちの人達で出来ないし、違う所でやっぱりゲームが起きているっていうこともあるんですよね。

堀越感じですねぇ。

クロサカただ、これがまた捻れを起こしているんだけど、サービスという観点でいえば、ユーザーにより近いのはクラウド側だから、クラウドの方が動けるんですよね、要は。

岸田はい。

堀越エリクソンやファーウェイが、キャリア寄りの防御策を提案するっていうのが、凄く目に見えてちょっとバイアスかかっているような、

クロサカうーん。

岸田まあでも、ずっとそれですもんね。繰り返しですよね。MWCは、今あるエコシステムの流れがあるんですけど、もうGSMコングレスの時代から、基本ずっとそれですからね。

クロサカうん。

岸田基本、このヨーロッパの業界はベンダーファイナンスなんですよ。ベンダーがキャリアにお金を貸すんですよ。

クロサカそうなんですよねぇ。

岸田そのエコシステムはずーっと変わらないです、これは。それとは関係ないところのエコシステムが、実はLTEでは元気だったりする。

堀越うん、そう。

クロサカそうですよね、HSPAの最後の頃とか、スウェーデン政府が政府保証してましたよね。

岸田いや日本だって、身売りする前の『イーモバイル』は、スウェーデン政府の保証付きの、ファイナンスな訳ですよね。

クロサカWTOルールの精神からするとかなりギリギリ感がありましたね。

岸田でもあれは、MWCのコミュニティ的には「んー、何か悪いんだっけ?」みたいな(笑)。「この国では違法だけど、この国では合法です」に近いぐらいのノリですよね?ああいうのって。

堀越うーん。

岸田でもそれ位ヨーロッパ色がずーっとあるイベントだし、でもそのエコシステムに乗ってきたし、それを色んな人が広げてきた訳ですけど、まあここでちょっと、変わるんでしょうねぇ。

堀越ええ。

岸田やっぱりエッジは、ゲームを変える可能性がある、エコシステムの中でお金の流れをちょっと変える可能性があるんで、

クロサカそうなんですよねぇ…。

岸田キャリア目線でもベンダー目線でも、扱いにくいですよねぇ…。

17. エッジと自動車業界

クロサカで、もっと言うと、本当の本丸のエッジユーザーって、2030年代のクルマ産業じゃないですか。

岸田見えてますからね。

クロサカだから、そっちから金引っ張っちゃった方が早いのでは、という話になっちゃうんですよね。

岸田ただ、車産業は、通信インフラ作れなかったんで。DSRCで作れないんで、その、「DSRCは作れなくても、でもエッジは作れるんだ。」って言うんだったら、それはそれで、車のエコシステムを誰が、とか何処のエコシステムにこう入り込むのか、みたいな。

堀越うん。

岸田けど車が『入り込む』っていう感覚が多分無いんで、そういう、なんか『新基軸』じゃないけど、新しい陣営、新政党の様なのが出来ちゃうみたいな感じですかねえ。結構なパワーですからねえ。

株式会社企 代表取締役 クロサカタツヤ 氏(中)と、 日経クロステック副編集長 堀越 功 氏(右)、 ICR 上席主任研究員 岸田重行(左)

クロサカそう考えると、もう話はすでにCESの方に移っている所があって、やっぱりBOSCHであって、デンソーなんですよ。

堀越ああぁ。

岸田そうですよね、車に行きますよねえ。

クロサカで、ここでいう車は、車体屋さんじゃないっていう事ですよね?

岸田ITですからねえ。テスラの株価がこのところぐっと上がった訳ですけども、まあ株価が全てとは言いませんが、まあそのテスラのイノベーティブさみたいな話っていうのを、まあ、多くの人が再認識したのかも知れないし、多くの既存の自動車メーカーが、同じ事が実はなかなか出来ない、と。

クロサカうん。

岸田まだ時間が掛かる、という状況もあり。ITでは作る能力をものすごく持っている中国勢も、まだそこに行き切れていない。中国で作り始めてるのであれですけど、行き切れてはいない。だとすると、今の自動車産業界も、イノベーションの所で言うと、皆さん、世界のトップ数社も、ビジネスモデルが変わるという危機感のところでやられている訳で。まあタイミングもありますよね。

クロサカそうですね。

岸田何かその、どの業界とどの業界とがこう、くっ付いていくとか、『飲み込む』っていう規模感にはならないような気がするんですけど、まあでも、くっ付かざるをを得ないんだよなあ。やっぱ社会インフラだからなあ。

クロサカうん。

堀越まあそれだけの5Gって、結構…安くない。

岸田高いですよねぇ。

堀越なんかGSMAにとっては毒まんじゅう的な感じもしてくる・・・。まあ飲み込むのか…でも、やらざるを得ないですもんねぇ。

クロサカねえ。

岸田エコシステムっぽい話で言うと、これって世界のエコシステムといえばそうなんですが、実際にお金を吸い上げているのはローカルのキャリアな訳じゃないですか、エンドユーザーから。サービスとして付加価値を提供しているというのは。で、そこの為の、出すための色んなまあ、裏方だったり、みたいなバリューチェーンの上流の方をこっちでやっているって言う話なので。まあそれでも、うーん結果的には…うーん、スマホでグーグル使い行くんだろ?っていう話で、「よくこの中抜きの所を、頑張っていますね」っていう業界ではあるんですよね?

堀越ああぁ。

岸田まあその意味では、キャリアはメディアとしての価値に今なっているので、日本のテレビ局とかとも近いのかも知れませんけど、中間を通す者としての価値でやって来ているので。

堀越コンテンツ少なくてっていう、ですね。

岸田今度違うプレーヤーが入ってきた時、そこにぶら下がる事が、違うプレーヤーにとって嬉しい事なのか?ぶら下がらない事が嬉しい事なのか?みたいな・・・やっぱり『誰がエッジを持つか』だなあ。

岸田色んな人が持てるんですけどね。

堀越少なくともMWCでヒントは出てきたんじゃないかなっていう感じは、していたんですよね。色々と出て来るんですけど、ニュースだけだと追えないんですよねえ…感覚的に。

岸田でもエッジのとこも、その、投資する人も難しいですよね。悩みながら、さじ加減で「何処まで突っ込もうかなあ…?」と思いながら、横見ながら「おうおうおう……どれやるの?」みたいな。「でもいつかやんないと…」とかって思いながら突っ込むという。

堀越真の超低遅延は、D2Dかエッジ・コンピューティングが無いと出来ないですよね。

岸田そうですね。5Gのバリューは、エッジが無いと有り得ないんで。

堀越5GのSA化は2022年か23年だと思うんです。それまでには、多分、動いてないといけないんで。

岸田多分、5Gがグッと広がるのは、スマホはおそらく買い替えのペースで広がるんでしょうけど、その他の話は、エッジで、SAになって、それからですよね?それまでは、入れられないんですよね。だからニワトリ・タマゴ的な話で、やっぱり何か先に、先行投資で行かなきゃいけなくて…。でAT&TとかVerizonとかは、マイクロソフト、AWSの環境を使えるよ、という感じでエッジに入れる訳です。軒を貸して母屋を取られる覚悟かもしれませんが、「今のクラウドのエコシステムに乗っかる」みたいな言い方をする訳ですよね。

クロサカそうなんですよね。

岸田で、まあそれは最初としてはそれでお金が回るんだったら、いいかと思います。エッジを作るのもニーズがあるからと、いう意味でニーズから入るっていうのは悪くないですけど、その先に、自分達のエコシステムとかを回せるのかどうか?みたいな話が……。かつて、iPhoneを先に扱った人にアドバンテージがあった、というのがありましたけど、似たことが5Gでも起こるってことですかね。

クロサカうーん。

岸田どうなんだろうなあ…?よく分からんなあ、と思いますよね。

堀越うん。

岸田ソフトバンクも、iPhone独占販売の2年が無かったら今のポジションにいないですから。

クロサカそうですね。エッジが来ることは間違いないし、ネットワーク・アーキテクチャーで、そこが決戦のポイントになる事、勝負のポイントになる事も見えていて。で、問題は、エッジがクラウド(サーバ)側から入って行くのか、エンドノード側から入って行くのか、っていう事と、それに基づく要件が見えないんですよね。で、とりあえず、要件が見えない時に、割れた絵図と要件の最大公約数を取ると……「ゲームこそが需要だ!」となる(笑)

堀越今起きている事ですね。

岸田睨み合いって言うかまあ、なんだろう、相撲で言うと、炎鵬の相撲ですよ。立ち合いでこう、睨み合うっていうやつ。

堀越要件によって、エッジの『位置』も『深さ』も『分散』の度合いも異なりますし、分散すればするほどセキュリティーリスクとか、オペレーションリスクも高まりますし。

クロサカそうなんですよねぇ。

堀越凄い複雑、まだパラメーターがまだ見えていない連立方程式、的な感じなんですよね。

堀越 功 氏

岸田ネットワークの中で、複数の階層にエッジを置くと言っているキャリアもいるので、まあそういうのも試行錯誤しながらですよね、ニーズが見えてくると、ここは要らないとか要るとか。まあ今の投資レベルだと絶対に‘要る’になるんですけど、この後広がるんで。

堀越楽天はGC局にCU置いて、それをエッジにすると言ってまして。

岸田はい。楽天はデータセンターの運用は、通信事業者より遥かに経験あるので。ただ、どちらかというとニーズありきじゃなくて、ネットワーク構成ありきのエッジの場所でしょうから、何か微妙な所も少しありますよね。

堀越日本ではかなり、GC局があくので、そこに期待する人多いですけど。総務省の人含めて期待していますけど、でも実際聞くと、そうじゃないんですよね?エッジのニーズはてんでバラバラで。

岸田要は、空く・空かない、じゃないんですよ。

堀越ええ。やっぱちょっとあれはプロダクトアウト的というか「空いてるから使わせよう」っていう発想。

岸田ちょっとこれに関しては、違うと思う。空いたから入るって言うのは、あのバルセロナの、フロアプランで入れて下さい、っていう(笑)。

堀越うーん。そうなんですよねぇ。

岸田バルセロナのフロアプランだと、ここにマーケットがあるとか、この場所に出展するとブランド力があるとか、連動するんですけど、

クロサカそうですねえ。

岸田GC局とか別に関係ないですけど。

堀越GC局もオポチュニティーだというなら、コムが、徹底的にエッジ投資すればいい訳ですよねぇ?

岸田エッジは、ちょっと難しいですよね?まだ色々なものが見えない所が多すぎて。

堀越うーん。

岸田まあ、車メーカーも悩ましいんだよなあ…。

クロサカ悩ましいですね。あの『車メーカー頼み』が日本の場合はあんまり機能しないのが悩ましくて。正直、CASE対応が遅れているじゃないですか、日本の車メーカー。

堀越そうですよねぇ…。

岸田数字が上がっちゃうんで、別に失敗しないんでしょうけど、先を行っている訳ではなく、周回遅れなんで。

クロサカ売上もさることながら、知見やノウハウも溜めていかなきゃいけないじゃないですか。

堀越はい。

クロサカで、ユーザ企業も組む相手を間違えると、売上が上がったとしても時間を捨てているんですよね。

岸田そうですね。

クロサカで、その間に先行組がずっとずっと向こうに行っちゃうっていう。「すごいビハインドだったなあ、多少儲かったけど」みたいな話。

岸田確かにそれはホントそうですねえ、悩ましいなあ…。どういう風に解決するのかなあ…。

クロサカ本当は、日本以外でもうちょっと融通が利いて、日本よりは小さくても良いので経済規模が一定程度ある、別の国でオペレーションした方がノウハウは溜まるんですよね、きっと。

岸田更から作ってしまう方が?

クロサカ中国は国内でそれをやっている訳じゃないですか。だから、そんなとこどこかないかなあ〜みたいな。

岸田韓国でヒュンダイが、みたいな話があるのかどうか。

クロサカタツヤ 氏(左)、堀越 功 氏(左)

クロサカ何かそういう次元にもはや入ってきている気がしますね、競争環境が。だから牽制も含めて、「そういう事考えているぞ」「やるぞ」「やっているぞ」っていう事を、言い始める競争に入った気がするんですよね。その時に『工場の跡地に実験的な街を作ります。』というのは、もしかするとスケールが足りないかもしれない。期待はしたいんですけどね。

堀越そうですよね、あそこがねえ?こう、何か空いたからって言う入り方がちょっと。

岸田気になりますよねえ。上手く行って欲しいですけど…。ただ、スマートシティっぽい話とか、年々『見え方』がやはり変わって来ているし、『求められ方』もちょっと変わって来ている気がするんで、色んな意味で、色んなタイミングで、モノは試しでどんどんやって行って、気が付いて、を繰り返すしかないんでしょうねぇ。

クロサカそうですねえ、あと出来る瞬間に、出来るだけハイレベルで大きく変える所に張るって事でしょう。あとソフトバンクがインドネシアの遷都に関与する話とかは、やっぱり、ちゃんと考えて動いているなって感じはするんですよね。

岸田投資家ですよ。

堀越内部では大反対出ているみたいですけどね。

クロサカまあ出るでしょうね。

岸田見てる基準が違いますよね。それは仕方がないです。企業論理ではたぶん投資はできない。旦那的にでないと。大企業はもうマインドが真逆だし。投資家は捨て銭と思ってやらないといけないし。今の日本企業の殆どに、そういう思いとか余力とか、価値観がもう薄いっていう事だけだと思うんですけどね。

クロサカそうなんですよね、市場が求めているのは線形成長ではないんで。非線形成長なんで、そこに線形のテンプレートをどんなにはめても。。。

岸田それがもう、だからアウトです。

クロサカっていう事なんですよねぇ…。

岸田では、もうみなさまお時間なので、このあたりで中締め、ということで(笑)。

クロサカはい。

堀越ありがとうございました。

(終)

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