2019年3月15日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

世界の街角から:厳寒の北の街へ~スウェーデン・ルーレオ

2018年12月、スウェーデン北部の街ルーレオを訪れた。クリスマスを控えたルーレオは、街中が雪に包まれており、とても綺麗な景色を観ることができた。とはいえ、市内でも最低気温がマイナス17度という厳しい寒さとなり、東京の寒さとは質が違うことを、身をもって体験することになった。

スウェーデン

【図1】スウェーデン
(主要都市を記載。後述するカトリネホルム、エシルストゥーナ、ヴェステロースはストックホルム近郊、サンドビーケンはイェヴレ近郊に位置する)
(地図出典:d-maps.com)

このような寒さは軟弱な筆者にはこたえるが、寒冷な気候はデータセンターには適している。スウェーデンでは、さまざまな大手IT企業がデータセンター開設、用地取得、新たなリージョンの開設などを次々と発表している。今回は、データセンターそのものの詳細には触れないが、このようなビジネスを可能としている背景に触れつつ、北の街ルーレオの探訪記をお届けしたい。

ルーレオの地誌

スウェーデンの北部ノールボッテン県の県都であるルーレオは、ルーレ川沿いにあり、ボスニア湾に面していて、人口は約7万5千である。スウェーデン北部では鉄鉱石の産地としてキルナが有名であるが、ルーレオはキルナからの鉄鉱石の輸送にも使われる港町である。ただし、冬季は海が凍結するため、鉄鉱石はノルウェーの不凍港ナルヴィクから輸出されるという。つまり、それだけ寒冷な土地なのである。最も気温が低い1月の平均最高気温はマイナス6度、平均最低気温はマイナス13度であり、筆者が訪れた12月もそれぞれマイナス3度、マイナス9度となっている。また、北緯65度36分に位置しており、夏は昼がかなり長くなり、逆に冬は昼が短くなる。筆者が訪問した日も、日の出は9時半近く、日没は13時過ぎで、「昼」は4時間もなかったことになる。

スウェーデン北部というと、過去にテレビアニメとして放送され人気を博した「ニルスのふしぎな旅」に登場するスウェーデン北部の「ラップランド」を思い出す方もいるかも知れない。ただ、ラップランドの範囲には諸説あるのか、Swedish Laplandの観光サイトにはルーレオの情報が含まれているのだが、現地で会った方は、ルーレオはラップランドではないと言っていた。とにかく、北部観光の入り口ではある。

早い夜、短い昼

ルーレオは、ストックホルムから北へ約700kmのところに位置し、国内線の航空便で1時間20分を要する。

筆者がルーレオ空港に着いたのは夜21時であった。なるほど、飛行機から降りブリッジに入った瞬間から寒さを感じる。空港の外に出ると、広場は高い木々に囲まれていて、まるで森の中に降り立ったかのようなのだが、道路も木々も雪に覆われ、照明を反射して輝いている。絵葉書にでもなりそうな情景である。ただし、空港の暖気がコートの中に残っているうちは良いが、それがなくなると冷気が体に沁みてくる。荷物を運ぶには手袋も必要である。外に長くいると、胸の中まで冷えて来るような気さえしてくる。やはり、東京で普段寒い寒いと言っているのとはレベルが違うようだ。

翌日は、白夜の逆で1日中薄暗いのではないかと心配していたが、一時は明るくなった。相変わらず綺麗な雪景色である。木々も真っ白になっている。現地の方の説明によれば、雪が降ることはあっても、このように綺麗に着雪することは珍しいそうだ。

ルーレオの短い昼

【写真1】短い昼
(出典:文中掲載の写真はすべて筆者撮影)

夜には少し時間があったので、せっかくの機会と思い駅まで街を歩いてみた。もちろん防寒対策は完璧にしてある。夜20時くらいだが、やはり開いている店は少ない。しかし街の灯りとイルミネーションは綺麗なので、それを観ながら歩く。中華料理のレストランがあった。しかしメニューを見ると「Pizza」の文字。中華らしき料理だけでなく、ずらりとピザメニューが並んでいる。日本でもこういう「インターナショナル」な店はたくさんあるが、果たしてここではどのようなものを食べさせてくれるのだろう……試しはしなかったが。それにしても、ある程度の規模の都市で、中華料理店のない街を見たことがない。

ルーレオの静かな街

【写真2】静かな街

ルーレオの中華料理店

【写真3】中華料理店

ルーレオ駅

【写真4】ルーレオ駅

ルーレオの列車

【写真5】列車

ルーレオのイルミネーション

【写真6】イルミネーション

 スウェーデンのデータセンター

スウェーデンでは最近、ルーレオだけでなく各地でデータセンター市場がホットになっている。北欧では、以前から冷涼な気候を活用したデータセンターが数多く建てられているが、最近その動きが加速している。2013年にルーレオで国外初のデータセンターを開設したFacebookは、2018年5月、当地で3施設目となる新たなデータセンターを建設すると発表した。2021年の稼働を目指すとしている。Googleも、直ちに使う訳ではないとしながらも、2017年10月にストックホルムの北西に位置するアーベスタで109ヘクタールの土地を買収したことを公表している。AWSもスウェーデンのカトリネホルム、エシルストゥーナ、ヴェステロースの3カ所にデータセンターを保有し、2018年12月にストックホルムで新たなリージョンを開設した。AWSは同月中に、さらにカトリネホルム、エシルストゥーナでも新たな用地を買収したことを発表している。Microsoftは、2018年12月にスウェーデン中央部のイェヴレとサンドビーケンで130ヘクタールの用地を買収すると表明した。なお、Microsoftに関しては、関係者の発表では「データセンター」という用語は出てきていない。Microsoftは、「for potential future use」と述べているが、報道等では事実上データセンター建設用地の取得であると受け止められている。

なぜこのように続々とデータセンターの開設や用地買収が進むのか。もちろん寒いことは、常により効率的に冷却する必要があるデータセンターにとって最も重要なポイントの一つである。しかし、それ以外にもさまざまな要因がある。水力発電などによる電力に恵まれており、政策的にも電気料金を安く抑えていること、政治的な安定性が高いことなどが挙げられる。

Fikaの時間

スウェーデンでは「Fika(フィカ)」と呼ばれる風習がある。これは有名でありご存知の方も多いと思うが、大まかには、甘いものと一緒にコーヒーを飲むことと定義されている。ただし、甘いものを食べて休憩するだけでなく、コミュニケーションに意味がある。

筆者も何回かFika体験をした。ビジネスの場においてもちょっとしたアイスブレイクとなる機会であり、ミーティングや職場のコミュニケーションを円滑に進めることができる。スウェーデンではこれが職場などの文化に溶け込んでいるのだそうだ。甘いものを食べながら喧嘩する人は多くない。Fikaがサボリやたまのイベントではなく、日常になっていることがたいへんうらやましいと思った。

ただし、健康管理としては、普段の食事はちょっと控えめにするか、運動するかして、胃袋にFikaのコーヒーとお菓子を入れるスペースを空けておく方がいいかも知れない。

 北欧の、それも北部といえば、オーロラを観たのではと思われる方もおられるかも知れない。ルーレオは北極圏内ではないが、観光情報サイトによれば、ルーレオの近くでもオーロラが観られない訳ではないようだ。朝(前述のとおり、特段早朝でなくても十分に暗いのだが)ホテルの窓から観た夜空も綺麗だったし、もしかするとチャンスはあったのかも知れない。しかし、さすがに極寒の中で僥倖に賭ける気にもなれなかった。世界遺産となっている教会街など、名所旧跡もあるそうなので、これはいつかの楽しみにしようと思う。再訪する良い理由になる。

※記載の情報は訪問当時の筆者の体験によるものです。ご旅行される場合は、最新の情報をご確認ください。

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