2020年8月14日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:宅配今昔



なかなか終息を見ないコロナ禍、自粛生活も長期化しており、外出もままならない中、一躍注目を浴びているのがデリバリーである。この期間、今まで以上に利用された方も多いのではないだろうか。

宅配便の4月の荷物取扱数は、ヤマト運輸が対前年113%、日本郵便も同127%と各社増加傾向。メール便というポスト投函型のものを入れるともっと大幅な伸びとなっている。

日本の戸別配送は世界最高レベルと高く評価されており、私もそう実感している。ロンドン駐在中に最も困ったものの一つが宅配で、当時(おそらく今もあまり変わっていないが)は時間指定できる方が少なく、できても午前・午後くらい。かつ、お願いしたとおりに来るのはまれで、下手をすると一日中待っていても届かない。業を煮やして連絡すると、今日は荷物がいっぱいで忙しかったからSorry!と当たり前のように言われることも度々だった。全国ほぼどこにでも、翌日遅くとも翌々日には届き、かつ細かな時間指定や、配送担当者の携帯に直接連絡して都合のいい時間に再配達をお願いできるのは日本だけではないだろうか。

それらを可能にしているのはICTの進化によって実現された、受注、仕分け、配送、それぞれにおける極めて高度なシステムである。Amazonやアスクルの倉庫を見学させてもらったことがあるが、刻々と入ってくるオーダーに合わせてロボットが最適なサイズの箱を組み立て、商品を自動でピッキングしていく。色センサーやグラム単位で判別できる重量センサーで商品の誤りがないかを確認し、瞬く間に箱詰めされ、地域別に分けられ、配送トラックに積まれていく様は圧巻である。

同時に、日本にはもともと高度な宅配の仕組みが根付いていたことも一因ではないかと考える。

いわゆる御用聞きである。サザエさんに出てくる、三河屋のサブちゃんと言えば皆さんお分かりだろうか。

最近でこそ、都心ではあまり見られないが、酒や米、醤油や味噌をはじめ、着物なども呉服屋さんが反物を家に持って来てくれるものだった。御用聞きはその家の家族構成を理解し、消費量もわかっているため、頼まなくても足りなくなった頃に見計らって持って来てくれる。着物も子供の七五三や、成人式、お嫁入りに合わせて、また家人の好みのものが入ったら等、折々に提案があり、かゆいところに手が届くように届けられるのである。ある意味、これはデリバリーの究極の形と言える。

PCや携帯から24時間注文できるのも便利だが、自身や家族のことを理解してくれているお店から、注文しなくても欲しいものが届くのはもっと便利。この頃は通販サイトでも注文履歴によって、レコメンドが出てくるが、それはまさに御用聞きノウハウの現代版である。現代の宅配においても、うちに配達にきてくれるヤマトの担当者は在宅確率の高い曜日や時間帯を良く知っていて、再配達の依頼を忘れていても、その時間に合わせて持ってきてくれたりもする。これは単なるシステムではカバーできない経験値によるノウハウと気遣いの賜物かと。

個人情報に関する意識が高まり、隣近所との関係も希薄化し、コロナ禍においては、宅配も直接受け取らないという世の中になっているのは個人的には寂しいことだと思うが、何事も時代に合わせて変わっていくもの。最新の技術を駆使した便利さと、昔ながらのノウハウを合わせ持つ、より良いサービスの進化を期待したい。

ちなみに、サザエさんは時代に合わせて少しずつ、食事や持ち物、衣装が変わっているのはご存じだろうか。

三河屋のサブちゃんも昔は自転車で配送していたが、今は原付バイク。トレードマークの酒屋さんの前掛けが黒いポロシャツになり、マウンテンバイクにまたがって保温リュックを背負ったスタイルに変わる日も遠くないのかもしれない。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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