2024.4.26 ICT利活用 InfoCom T&S World Trend Report

自動運転に向けた各省庁の動きについて

Image by Marzena P. from Pixabay

高齢者の運転操作の誤りによる痛ましい交通事故のニュースを聞くたびに、少しでも早く自動運転が実現してほしいと多くの人が待ち望んでいるのではないでしょうか。Alphabetグループ傘下で自動運転車を開発するWaymoが米国のアリゾナ州やカリフォルニア州で有償での無人自動運転移動サービスを開始するなど、世界各国で自動運転に向けた動きが見られます。電気通信分野における国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)の無線通信部門(ITU-R: ITU Radiocommunication Sector)が自動運転用の周波数割当てを勧告しました。それを受けて欧州では自動運転に向けたプロジェクトが立ち上がり、米国ではサミットが開催されるなど、いずれも官民連携の動きが活発化しています。自動運転実現のためには車両単独ではなく、道路、信号等のインフラとの協調、社会的受容性の検討等幅広い議論が必要だということが各国の共通認識となっているのだと思います。

わが国においても官民が一体となって取組みを進めていますので、各省庁の取組みを紹介しながら、今後の方向性について考察したいと思います。

前提条件としてまず、自動運転システムのレベルについては、以下のように定義されています。

  • レベル1:システムが前後・左右のいずれかの運転操作を支援
  • レベル2:システムが前後・左右の両方の運転操作を支援
  • レベル3:特定条件下でシステムが運転制御を実施/作動継続困難時等は運転者が応答
  • レベル4:特定条件下でシステムが運転制御を実施/作動継続困難時等もシステムが応答
  • レベル5:常にシステムが運転制御を実施

(出典:警察庁「自動運転に係る対応」)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/2307jidountentaiou.pdf

完全自動運転はレベル5の世界と言えますが、その実現にはまだまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。現時点では、サービスカー(商用車)ではレベル4、オーナーカー(自家用車)ではレベル3までは技術的に実現可能となっています。完全自動運転(レベル5)までは様々な課題が存在することから、走行条件の絞り込みが容易なサービスカーからレベル4を先行実装するべく取組んでいます。その典型的な取組みがRoAD to the L4プロジェクトで、2025年度を目途に無人自動運転サービスを50カ所程度で実現し、また高速道路でのレベル4トラックの実用化をめざしています。自動運転に向けた大きな流れとしては以上ですが、わが国の取組みを各省庁ごとに、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

国土交通省の取組み

交通死亡事故の大部分は運転者の違反に起因しており、国土交通省では自動運転の実用化により交通事故の削減効果に期待しています。さらに地域公共交通の維持・改善やドライバー不足への対応等につながることも期待しています。自動運転の実現に向けては、①安全性の向上、②地域の理解、③事業性の確保、を課題としており、そのために自動運転(レベル4)法規要件の策定と自動運転による地域公共交通実証事業に取組んでいます。自動運転の実用化のためには車両の技術開発のほか、走行環境の整備、社会的受容性の向上等、総合的な取組みが必要であるとして、社会的受容性の観点からシステムによる「判断」のあり方に関する調査を実施するとともに、鉄道の廃線跡など特別な走行環境における関係者の役割と技術要件のあり方を調査しています。また、地域づくりの一環として行うバスサービスについて、持続可能性を検証するための自動運転実証事業を支援しています。2022年度は全国から22件の応募があった中、雪の中での実証をめざす「北海道上士幌町」、信号機等との連携をめざす「長野県塩尻市」、市中心部での実証をめざす「愛知県日進市」、磁気マーカー上の走行をめざす「滋賀県大津市」の4件を採択しました。2023年度は自動運転実装化元年と位置付けて支援地域数を30カ所程度に増やすべく募集をしました。

  • https://www.mlit.go.jp/koku/content/001609155.pdf
  • https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001730.html

経済産業省の取組み

自動車産業は、コネクティッド化、自動運転化、シェアリング・サービス化、電動化などの産業構造を大きく変える可能性のある変化(CASE)に直面しています。その中でも自動運転は、交通事故の削減や高齢者等の移動手段の確保、ドライバー不足の解消など社会的意義が大きい一方で、技術的難度が高く、その実現のためには様々な制度やインフラの整備も必要であるため、経済産業省では官民一体となった取組みが求められるとしています。同省は関係省庁とも連携しながら「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」を推進しています。2025年度を目途に無人自動運転サービスを50カ所程度で実現し、また高速道路でのレベル4トラックの実用化等をめざしています。さらに市街地などで歩行者や他車両が混在する空間へのサービス拡張を図ろうとしています。限定空間におけるレベル4移動サービスの実現に向けては、福井県永平寺町で実証実験を実施したことに続き、茨城県日立市の「ひたちBRT」で対象エリアを拡大、中型バス等車両への拡大を図った実証実験を推進していこうとしています。併せて、高速道路における隊列走行を含む高性能トラックの実用化に向けた取組み、さらには混在空間でのサービス確立に向けた実証実験について募集をしています。

  • https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/Automated-driving/RoADtotheL4.html
  • https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/83b26b14-5c99-4268-970c-fefc1f0a7b71/bd7b41be/20230725_meeting_mobility_roadmap_outline_05.pdf
  • https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/k230217002.html

総務省の取組み

総務省では「自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会」を開催して有識者による検討を進め、2023年8月に中間取りまとめを実施しました。2040年頃の自動運転車の合流支援などの実現には、車載器の普及が不可欠であることを念頭に置き、導入期は交通弱者の保護を含む安全・安心や交通流円滑化などの協調型自動運転以外のユースケースに、普及期には路車間・車車間通信による調停・ネゴシエーションを用いた合流支援などの協調型自動運転も含めたユースケースに取組むべきで、その検討に当たっては、既存ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)無線との連携やインフラ整備などについても深掘りを必要としています。自動車と自動車(V2V:車車間通信)や自動車とネットワーク(V2N)など、自動車と様々なモノとの間の通信形態をVehicle to everythingを意味するV2Xと総称しますが、ITS専用周波数帯を用いた直接通信であるV2I(自動車とインフラ間の通信)・V2V等通信と携帯電話網を用いた間接通信であるV2N通信、それぞれの特徴を踏まえて相互補完しながら活用することが必要だと報告しています。また、ITU-R勧告を踏まえて世界的に5.9GHz帯の周波数のV2IおよびV2V等システムへ割当てが進められている中、わが国では現在、放送事業に割り当てられているため、調整が必要になっており、導入ロードマップの方向性についても報告しています。

  • https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000613.html

警察庁の取組み

警察庁としては、自動運転技術は交通事故の削減、渋滞の緩和等に有効な技術と考えており、その進展を支援する観点から各種取組みを実施しています。具体的にはレベル4に相当する運転者がいない状態での自動運転(特定自動運行)に係る許可制度を創設した道路交通法の改正(2022年4月公布、2023年4月施行)、道路使用許可等の特段の手続きなしに実施可能な公道実証実験の対象を明確化した「公道実証実験のためのガイドライン」の策定(2016年5月)、遠隔型自動運転システムおよび通常のハンドル・ブレーキと異なる特別な装置で操作する自動車の公道実証実験について、道路使用許可の申請に対する取扱いの基準を規定した「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」の策定(2023年4月最終改訂)等です。また、「協調型自動運転システムへの情報提供等の在り方に関する検討会」を主催して、今後の信号情報、交通規制に対して、および警察が取組むべき事項についての検討を進めています。

  • https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/r4_kyoutyou_houkokusho.pdf

まとめ

以上、自動運転実現に向けた各省庁の取組みについて紹介してきました。完全自動運転のレベル5までは見通せませんが、レベル4の実現に向けて取り組んでいることがおわかりいただけたかと思います。自動運転を実現するためには車両単独での実現は困難で、V2Xと呼ばれている道路からの情報、信号機からの情報、歩行者の状況、他の車の状況等様々な情報を収集し、それらを迅速に分析、判断して行動につなげることが必要となります。こう考えると超えなければならないハードルがたくさんあるように感じられますが、AIをはじめとするテクノロジーは日々進化していますし、一方で高齢化、人手不足の進展等課題が山積し、実現に向けた期待はますます大きくなっています。ともかくも目の前にある課題を一つ一つ地道に解決して、少しずつでも前進していくしかないのではないでしょうか。現在、地域交通に課題を抱えている地域は非常に多くあります。政府、自治体、住民、事業者が自分ごととして考え、持っている知恵を持ち寄り、結集することで必ずや解決策は見つかるものと思います。できる限り早期に自動運転社会が実現できるよう、私自身も貢献していきたいと考えています。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

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