欧州 (EC) の電子商取引市場の競争調査に透ける米国系OTT への対処のジレンマ

世界中でますます存在感が増大する米国系OTT
米国を中心とする大手OTT (Over the Top) 事業者の存在感が、ますます増大している。日経新聞は2017年6月2日付の記事「世界の株、時価総額最高 IT勢にマネー流入」において、時価総額の世界ランキングの上位5社をトップのApple(7,964億ドル)以下、Alphabet(Googleの持株会社)、Microsoft、Amazon、Facebookが独占したと報じた。同記事は世界の全産業の時価総額の合計を76.6兆ドル(約8,430兆円)と試算しているので、5社だけで全体の4%弱を占めたことになる。本稿執筆時点(8月7日)で、Appleの時価総額はさらに上昇して8,202億ドル(90.2兆円)となったが、日本最大の時価総額を誇るトヨタ自動車の数値(20.7兆円)と比べると、Appleの評価がいかに大きいかが分かる。
このような株価高騰に対して、メディアにもバブル崩壊の危険性を唱える声が存在する。例えば、Fortune誌は6月10日の記事 (“Why Tech Stocks Crashed Friday”) において、Goldman Sachsのチーフ・インベストメント・オフィサーが、上記5社の株価は2017年度のStandard & Poor’s 500銘柄の株価上昇総額の40%を占めており、株価急落の危険性を指摘していると伝えた。実際、記事タイトルのとおり、関連株価は6月9日の金曜日に一時的に低下したが、その後は短期間で復調した。また、同じ時期(6月7日)、The New York Times (NYT) 紙は“Five Big Tech Stocks Build Market Euphoria, and Jitters(「5大テック株が創出する市場の熱狂的陶酔と懸念」)”と題する記事において、投資家心理を「ゴールドラッシュ」と表現している。
しかし、2000年初頭にはじけて、世界の全体経済に大きなマイナス影響を与えたITテレコム・バブル (dot-com bubble) とは異なり、今回の企業群 (OTT) には市場における強固な成功と将来性の裏付けがあり、株価暴落の危険性は低いという反論も多く存在する。周知のとおり、米国系OTTのサービスの多くは2000年代から世界中で広く支持されており、欧州でも英独仏など大半の国で当該サービスの市場シェアの首位に君臨している。
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