2018年11月1日掲載 ITトレンド全般 ICR研究員の眼

目立つ「鼻」~人工嗅覚技術の進展



 先月中旬、「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16日~10月19日)が開催されました。閉幕してしばらくは、会う人と「こんな展示があった」等の話題で盛り上がった方も多いのではないでしょうか。そのなかで、派手さこそないものの静かに注目を集めていたのが「人工嗅覚」でした。

■同時開催されていたMEMSの展示会
 CEATECの開催期間中、同時開催された展示会に「MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2018」がありました。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称で、日本語では「微小電気機械システム」、「メムス」と呼ばれており、本来的にはミクロンスケール(1ミリメートルの1000分の1の微小さ)の、電気で駆動する機械を指しています。
 この展示会では「MSSフォーラム」(※1)による「MSS嗅覚IoTセンサー」が注目を集めていました。頭文字だけ追うと混乱しそうになりますが、MSSはMembrane-type Surface stress Sensorの略称で、「膜型表面応力センサー」です。MEMSの研究から発展してきた微細加工技術、いわゆるMEMS技術によって開発されたセンサーの一つがMSSというわけです。

■香り・匂いのデジタル化をめぐる2つの流れ
 このMSS、センサー表面の感応膜に香りや匂いのもとになる分子が吸着すると、表面応力が生じて電気抵抗が変化し、この変化によって対象の分子を検知できるセンサー素子です。MSSによって香りや匂いのデータ化(電気抵抗の変化のデータ)が可能で、そのデータ分析によって香りや匂いを判別するというわけです。従来のセンサーと異なり、MSSでは感度の性能が大幅に向上しているにもかかわらず、超小型化を実現しており、人工嗅覚の活用に向けた環境が整いつつあります。
 MSSとは別のアプローチで、「CEATEC JAPAN 2018」ではパナソニックが「人工嗅覚システムの開発」(※2)の技術セミナーを実施し、デモを含めて立ち見があるほど注目されていました。パナソニックの人工嗅覚技術で特徴的だと感じたのは、昆虫の触覚機能を模倣している点。匂い物質を濃縮する機能とそれを識別する機能を持ち合わせ、昆虫の嗅覚機能を担っている「触覚」を再現するアプローチで技術開発を進めています。
 いずれの研究開発も、五感の中で最も難しいとされる「嗅覚」に挑戦する先駆的な取組みです。

出所:革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の研究開発プログラム「進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム」(宮田令子PM)の研究紹介ページより。

出所:革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の研究開発プログラム「進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム」(宮田令子PM)の研究紹介ページより。

■どう活用するか?課題は利用シーン開拓
 人工嗅覚の活用、具体的にはどのようなシーンがありえるでしょうか。
 パナソニックの技術セミナーでは、火災予兆検知、爆発物・麻薬・毒ガス検知、品質管理や衛生管理等への活用が例示されていました。
 人の鼻の代替もしくはそれ以上に感度良く香り・匂いを識別できる嗅覚と考えると、他にもエンタメやマーケティング・プロモーションへの応用も考えられます。また、香り・匂いを人工的に制御する技術との組み合わせで、更に用途は広がるかもしれません。人工嗅覚の利用シーンをどう開拓するか、今後注目されると考えています。

※1 MSSフォーラム <https://mss-forum.com/>。
現在フォーラムへの参加申込(第三次公募)を行っている(2018年11月1日~11月22日)。

※2 この研究開発の一部は、革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の研究開発プログラムの一つである「進化を超える極微量物質の超迅速多項目センシングシステム」(宮田令子PM)の一環として実施された。上記図は、パナソニック技術セミナーでも引用されていたもの。
<https://www.jst.go.jp/impact/hp_miyata/index.html>

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