2023.6.15 5G/6G

国内外におけるローカル5G/プライベート5Gの概況

はじめに

日本では、2019年4月に、5G向けの周波数が携帯電話事業者(MNO)に割り当てられ、同年12月にローカル5Gがミリ波周波数(28.2GHz-28.3GHz)で制度化された。

ローカル5Gは、全国で画一的にサービスを提供するMNOとは異なり、主に建物内や敷地内での利活⽤について個別に免許される5Gシステムである。地域の企業や⾃治体等が自ら免許を取得し、個別のニーズに応じて、独自の5Gシステムを柔軟に設計・構築できる。

日本におけるローカル5Gの概況

総務省によると、2023年4月末時点でローカル5Gの免許人は138者であり、メーカー、地域通信事業者、ケーブルテレビ事業者、地方自治体、大学・研究機関などが免許を取得している。[1] 2020年12月に、ミッドバンド周波数(4.6GHz-4.9GHz)をローカル5G向けに割り当てた後、同周波数に係る無線局の免許数が増加している。[2]

日本において、ローカル5Gは一定程度普及しているものの、導入・維持コストが高い、免許取得・エリア設計に専門知識を要する、導入後のシステム監視や問題発生時の対応が困難であることなどが、導入の障害となっている。

総務省は、2023年4月に改訂した「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」において、より柔軟なローカル5Gの実現に向けた制度の改善、税制措置等により、ローカル5Gの更なる普及を推進するとしている。[3]

国外におけるローカル/プライベートネットワークの概況

諸外国においても、日本のローカル5Gに相当する、ローカル/プライベートネットワーク向けの免許付与や周波数割当がなされ、産業用途を中心に実証・活用が進んでいる。

欧州主要国(英国、ドイツ、フランス)では、2019年よりローカル/プライベート5G向けに周波数を開放している。ドイツは、インダストリー4.0政策に基づき、5Gの産業利用を推進しており、2019年11月に「ローカル キャンパス ネットワーク」(3.7-3.8GHz帯)を開始した。同ネットワークにおいては、産業グループ、大学・研究機関などに対し、321件の周波数割り当てが承認されている(2023年5月時点)。[4] 2021年1月には、ミリ波帯(26GHz帯)を利用した「ローカルブロードバンド」がドイツで開始した。[5] 5Gならではの高速大容量・低遅延の通信が可能な、ミリ波帯の有効活用が世界的に課題となっている。そうした中で、ドイツなど多くの国において、ミリ波帯をローカル/プライベート5G向けに割り当てているため、5Gの特長を活かしたユースケースの創出が望まれる。

米国では、政府などの既存免許人と周波数帯(3.5GHz帯)を共用する「市民ブロードバンド無線サービス(CBRS)」を利用して、企業等がプライベートLTE/5G網を構築している。米国で、プライベートネットワークのマネージドサービスを企業に提供するFederated Wirelessは、2023年5月、プライベート5GとMNOによる公衆5Gを相互運用可能なサービスの提供を開始した。[6] プライベート網および公衆網それぞれの利点を組み合わせることで、ユーザーの利便性向上が期待される。

アジアでは2021年末以降、韓国、香港、台湾で、ローカル5Gに相当する制度が順次導入された。韓国は、2021年11月にローカル5G(5G特化網)の周波数割当申請(4.7GHz帯、28GHz帯)を開始した。韓国は、ローカル5Gの先行国(ドイツ、日本、英国など)を念頭に、グローバル5G市場(B to B)での競争力確保を図る。[7] 制度整備を踏まえて、アジアにおいても、ローカル5Gの活用拡大が見込まれる。

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