2018年1月26日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

GAFAとの協調と競合~B to B to Xでの効用



5Gに向けた標準化が進むなか、他方でLPWA (Low Power Wide Area) 領域でセルラーIoTの取り組みが本格化し、モバイルネットワークの重層化が進展しつつあります。当然のことですが、ネットワークを活用するITプラットフォーマーの活動も複線化・重層化して新しいサービスを生み出しています。なかでも米国の巨大IT企業は業績が好調で新しい事業分野でのM&Aに積極的に取り組んでいて、世界中で影響力をますます強くしています。そこで今月取り上げる話題として、個別のモバイルやITサービス・製品ではなく、今や世界中で影響力を増している巨大IT企業を代表して4社、すなわち、Google、Apple、Facebook、Amazon(以下、「GAFA」)とどう付き合えばよいのか、どのような立ち位置で対応するのがよいのかを考えてみたいと思います。

昨年後半、NTTの株価が好調に推移した際に改めてNTTの事業構造が1985年の発足後30年を経て大きく変化したことが注目されました。1986年の売上では固定電話が82%を占めていたのに対し、2016年では移動通信35%、地域通信25%、長距離・国際通信16%、データ通信13%と収益源がバランスよく分散していて安定した業績向上をもたらし、本年3月期の連結純利益は3期連続で過去最高となる見通しとなっています。もはやNTTはグローバルなIT企業に変身を遂げています。他方、世界に目を向けるとIT産業を代表するGAFAが情報通信市場に君臨しており、巨大なプラットフォームを構築している現実があります。GAFAの事業構造について、2017年10月31日の日本経済新聞「経済教室」に楠木建・一橋大学教授の詳細なレポート「巨大IT企業にどう向き合う-特定領域で深掘り戦略を」が掲載されていますので是非参考になさって下さい。なかでも「GAFA」のビジネスの特徴を簡潔に以下のように整理・分析しておられますので紹介します。

 Google                「情報技術」の会社               インフラ+バーチャル
 Apple                  「ハードウェア」の会社        プロダクト+リアル
 Facebook            「コミュニティ」の会社         プロダクト+バーチャル
 Amazon              「小売り」の会社                  インフラ+リアル

バーチャル領域での収益源はデジタル広告であり、GoogleもFacebookも情報をデジタル広告によって収益化している存在です。情報を収益に変えるビジネスモデルは世界中どこでもデジタル広告以外ありません。唯一の成功モデルでプラットフォームの構築に成功したその競争力に対抗することは今や不可能とさえ言えます。しかし、このバーチャルな情報収益化モデルのリスクはプラットフォームが本質的に具備している独占力(市場支配力)にあり、欧州だけでなく米国内でも競争政策と衝突していて、特に欧州では多額の制裁金を科される事態となっています。プラットフォームが本来持っている独占性が情報検索などを用いたデジタル広告を経て、優越的地位の乱用と見做されるという皮肉な結果をもたらしています。デジタル広告が情報の収益化の唯一の成功モデルであるだけに事態は深刻です。また検索広告の掲出を嫌う利用者からは広告を掲示しないアプリソフト(アドブロッカー)を利用して検索広告を掲示しない行動が多く見られるようになってきています。バーチャルな広告モデルに新しい工夫が求められています。

一方、リアルの領域では現在小売りのAmazonとIT機器製造のAppleが一部の国を除いて世界中で市場を大きく占有しています。しかしながら、小売業を含めてサービス業はそもそもローカルなビジネスなので、Amazonには世界各地の市場に競合企業が存在していて激しい競争を展開しています。また、製品 (iPhone) 自体がプラットフォームとなっているAppleに対しては製品開発で新興国メーカーが競合しているし、部品開発では日本企業の採用が拡大していて単純な市場支配構造とはなっていません。そこがバーチャルとリアルとの差となっています。情報というバーチャルな世界では市場支配力が働き易いのに対し、リアルの世界ではビジネスモデルの地域性や垂直的な製造過程など多様な関係性のため市場支配力の発揮は難しい環境にあります。そこに通信事業者がIT事業者としてB to B to Xでつけ入る余地があると思います。つまり、情報をベースにした検索広告という唯一の確立したビジネスモデルについては対抗するのは困難であっても、リアルのサービスと製品にデジタル化による付加価値をつけて=デジタルトランスフォーメーションによって消費者・利用者に提供することは、広告でもない小売りでもない、製品製造でもない新しいビジネスモデルの確立に参加するというこれまでにないIT企業の機能となります。リアルなサービスと製品に立脚しているからこそ、ローカルな市場で成立するモデルと言えます。とはいえ、GAFAの持つ確立したプラットフォームと対抗・競合するばかりでなく協調・利用して独自の垂直的プラットフォームを構築する戦略がここでは必要となります。 

通信料金が定額契約に移行して以来、設備の増強による通信容量の拡大があっても契約数の増加のほかに収入増の途はなくなっています。これが通信会社の収益拡大の限界を示しています。残された方策は消費者・利用者が支払うサービスや製品の代金から一部を受け取ることや、代行・取次の手数料として課金することなど、定額の通信料以外の収益源を確保することなので、こうしたビジネスモデルをプラットフォームとして構築することがB to B to Xの本質になります。もちろん、そのプラットフォームでは情報(デジタルデータ)とリアルなサービス・製品、オペレーションとの垂直的な組み合わせがキーとなるので、デジタルトランスフォーメーションの総合調整役という裏方の役割が重要です。現状ではGAFAのプラットフォームをも取り入れ活用して独自の垂直型プラットフォームを構築する途がベストでしょう。GAFAはどこでも誰でも使える、その意味では通信事業者のインフラと同様の汎用プラットフォームなので特定の領域に強い訳ではありません。通信事業者も同じく個別の領域に強くありませんので既存のプラットフォームとの協調は新しいチャンスとなり得ます。

具体的には、通信事業者が進めている5GネットワークやIoTプラットフォーム(LTE-M、NB-IoT)、さらにはネットワークスライシング技術、AI、ビッグデータの解析などを法人事業活動 (B to B) のなかで提携先のサービス・製品に組み込むことで特定領域の新しいプラットフォームとすることができます。情報の収益化では広告に打ち勝つことはできませんが、リアルのサービス・製品のデジタルトランスフォーメーションでは収益化の方途は新たな付加価値創造のなかにあります。NTT株の評価の際に多く語られていた収益構造のバランスのよさこそ、NTTグループが提唱するB to B to Xの取り組みの源泉ではないかと感じています。これこそ、1985年の民営化、1988年NTTデータ分社、1992年NTTドコモ分社、1999年NTT再編成(分社と持株会社化)と続けてきた構造改革の成果と言えるものです。GAFAという巨大IT企業との協調と競合をB to B to Xで進めていく姿こそ世界の通信事業者が目指す有効な取り組みとなります。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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