2018年8月29日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

付加価値提供にコミットする多様なB2B2Xモデルの追求



NTTの中期経営戦略「新たなステージをめざして2.0」(2015年5月)のなかで、“B2B2Xモデルをさらに推進し新たな市場を開拓”が謳われて、NTTはグループを挙げて積極的にB2B2Xビジネスを進めてきました。このB2B2Xビジネスの加速は、様々な分野のサービス提供者へのサポート(触媒、黒子役)を通じて、最終ユーザーに付加価値を届ける事業構造に変革する取り組みです。ここでは、メインプレーヤーはセンターB、すなわちB2B2Xの真中のBとなるサービス提供者であり、新サービスやユーザーエクスペリエンスの進化、社会的課題の解決を最終ユーザーにもたらします。NTTグループがAI、IoT、VR、AR、セキュリティなどをパートナーとともに提供しサポートする役割を果たしていくモデルです。

 このB2B2Xビジネスの拡大は、中期財務目標の達成、すなわちEPS成長(400円以上)、設備投資の効率化(2,000億円以上)、コスト削減(8,000億円以上)とともに、計画期間中に大きく進展し、NTTグループ内外に構造変化を示してきました。意識改革を含めて、大成功を収めています。これまでの中期経営戦略は、今年の3月期が最終年度でしたので、新体制の下、新たな中期経営戦略を今秋に策定すると既に発表があり、引き続きB2B2Xモデルの推進による市場開拓にチャレンジすることが掲げられています。具体的な計数等はこれからですが、澤田新社長はお客様の変革(デジタルトランスフォーメーション)を支援すると表明し、法人向けには、5Gの活用を含めてB2B2Xモデルの推進をさらに加速することを、個人向けには、通信事業の枠を超えて会員基盤の拡大を図り、コンテンツや決済などライフスタイルの変革を支援するパーソナルサービスの提供を進めることを述べています。B2B2XモデルがメインプレーヤーをセンターBに置いていることに変わりはないものの、それだけではなく、個人向けのパーソナルサービスにおいても、会員基盤という通信事業の枠を超える観点からサービスの充実を図る方向を示しています。この点で、センターBが最終ユーザーに付加価値を提供するこれまでのモデルだけでなく、個人向けのパーソナルサービスにおいてパートナーと一緒になって自らが新たな価値を提供していくという方向への変化が感じ取れます。

 今年3月に終了した中期経営戦略「新たなステージをめざして2.0」では、成長戦略として、グローバルビジネスの拡大・利益創出、国内ネットワーク事業の効率化・収益力強化と並んでB2B2Xビジネスの拡大が取り上げられていて、グローバルビジネス分野でわずかに目標に達しなかったものの、全体として大きく利益成長を果たし、株価の上昇に典型的に表れているとおり、企業価値の向上を達成したことは特筆できます。しかし、少し内容に立ち入ってみると、残念ながら昨今注目を集めている5Gサービスやポイントビジネスによる会員基盤の拡大など最近のモバイル通信事業に関する事柄がほとんど取り上げられていないことや、他方で、事業の拡大効果よりむしろ、サービス卸である光コラボレーションモデルの導入、スマートフォン販売時の手数料削減などのコスト削減効果が利益成長をもたらしたことが分かります。経営改善効果は主にコスト構造の変革によりもたらされたものと言えます。

 その中で、B2B2Xモデルは拡大しましたが、どの程度、利益成長に貢献したのかは現在までのところ、未知数なので私にはよく見えていません。ただ、付加価値の多くは本来のサービス提供者であるセンターBの法人企業が生み出していると考えられ、通信事業者であるNTTグループの収入はどの程度なのか、通常の約款サービス収入とはどう違ってくるのかなど、詳細は当然、営業取引上の機密事項なので明らかではありません。また、センターBにあるサービス提供者の立場は、最終ユーザーを顧客として確保することから付加価値は大きく、反面、通信事業者の立場は競争者との間でone of themであり、利益拡大につながるのかどうか、懸念が生じます。ただ、デジタルトランスフォーメーション時代の通信事業者の生き残り戦略としては避けられない方向であり、AI、IoT、VR、AR、セキュリティなどによる付加価値の獲得が期待できるので、取り組みとして一層進めることは何より重要であると考えます。

 しかし、他方、通信事業者はインフラ事業者であり、採算に見合う範囲だけでB2B2Xビジネスを展開すればよいとはなり得ません。市場競争のなかでインフラ整備を行うためには、不採算地域や公共的なサービスに対応する責務が求められていますので、B2B2Xモデルでも利益成長が最低限必要となることは言うまでもありません。例えば、5Gサービスの開始が目前となっているモバイル通信事業においても、具体的な5Gを用いたサービス開発において、「協創」をテーマに進められています。ただ、センターBにいるサービス提供者をパートナーとするだけでは、全国をカバーする5Gインフラの構築まではなかなか進まず、逆に、5Gインフラが整わないと協創パートナーとの間で新たなサービス開発が進展しないという悪循環となってしまいかねません。結局のところ、これまで10年単位で新しい技術に基づいて構築・発展してきた移動通信システムの経験を踏まえると、新しいモバイル通信のインフラ整備に伴って、当初に想定したサービスにプラスして新しいサービスが個人向けに生み出されてきたことが分かります。ビデオや音楽視聴だけでなく、ソーシャルゲームやSNS、YouTubeなど新しいネットサービスが主流になっていることでも頷けるところです。B2B2Xビジネスでモバイル通信のインフラ整備が進むためには、電話やメール等の比較的単純なデータ通信だけでは5Gは不要(4Gで対応)なので、5Gを必要とする個人向けの新しいサービスがどうしても必要となるし、そこからの利益成長が求められます。

 B2B2Xでも、通信事業者も自らがセンターBの位置を占める多様なビジネスモデルを追求し、付加価値提供にコミットすることが、その方法ではないかと思います。今年秋に発表されるNTTグループの新しい中期経営戦略のなかで、これまであまり触られてこなかった5Gやポイントサービスと会員基盤などを取り込んで、協創パートナーという従来型のB2B2Xモデルだけでなく、新しい付加価値にコミットして、自らセンターBの位置を占める多様なB2B2Xモデルを創出して市場開拓にチャレンジしてもらいたいと思っています。既存のネットワークインフラを活用して市場を拡大するだけでなく、新しい世代のネットワークインフラの構築に繋がるB2B2Xビジネスが今こそ求められています。会員基盤の活用はその第一歩と言うべきものです。

 通信事業の枠を超えた顧客会員基盤の拡大・拡充があってこそ、パートナーを惹き付ける多様なB2B2Xビジネスが追求できるのです。まずは、コンテンツや決済、認証(映像・音声)、情報流通などで、センターBになる道筋を探ることが近道です。次いでさらに、いわゆるB to C to C(C to C)ビジネスという最近のシェアリングエコノミーへの参入も検討したらよいと考えます。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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