2019年10月、約7年ぶりに、私が幼少時代に数年間だけ生活していたミャンマーの小さな町、ジャウメイ(Kyaukme)へ行ってみました。ジャウメイは大きな特徴がなく、ミャンマー人にとっても一生に一度は行くか行かないかくらいの地方都市ではありますが、その特徴のなさが故に、むしろ現在のミャンマーの一般都市の実態が垣間見える側面があり、今回少しご紹介していきます。
前回の「世界の街角から:ミャンマー ~久しぶりに帰ってみた 」はこちら
ジャウメイについて
ジャウメイはほとんどの人に知られていないので、まず基本情報をご紹介します。ミャンマーの地方行政区分は、7つの地方域と7つの州に分かれており、この中でジャウメイが所属しているシャン州は一番面積が広い州となっています。地理的にはミャンマーの東部に位置し、中国、タイ、ラオスと国境を接しています。またミャンマーは135もの民族で構成されていますが、シャン州ではシャン族が大部分を占めています。そのほかビルマ族、コーカン族、ワ族、印僑と華僑なども多く暮らし、人口は約470万人です。
シャン州では中国との国境が近い地理的な条件から、国境貿易が盛んです。さらにシャン州は、北シャン、東シャンと南シャンに分かれており、南シャンには日本でいえば軽井沢のような観光・リゾート地があります。今回ご紹介するジャウメイは北シャンに属しており、茶葉や鶏肉などが有名です。
ヤンゴンからジャウメイまでの行き方
よく同じミャンマー人からも、ジャウメイへの行き方について尋ねられることがあります。
ここではヤンゴンからの行き方をご紹介します。
ミャンマーにおける長距離移動にはさまざまな移動手段がありますが、最も一般的なのは高速バスです。ヤンゴンからは多くの都市へ高速バスでアクセスすることが可能で、経済的なパフォーマンスも含め、利便性が高く、庶民の強い味方です。
ヤンゴン市内から17km程度離れたアウンミンガラー高速バスターミナル(Aung Mingalar High-Way Bus Terminal)はジャウメイ行きも含め、長距離バスが出ているところです。敷地が広く、地方へ行くさまざまなバスが運行されているため、目的のバスの乗り場がどこにあるのか、とても分かりにくく、迷うこともあります。
乗車チケットはバスステーションで直接購入することもできますが、ジャウメイ行きのバスは1日に3~4本のみの運行と本数が少なく、事前に運行会社に電話でチケットを予約しておくことをお勧めします。大衆的な4列座席のバスもありますが、13時間にわたる長時間の移動となるので、広々としたVIPバスがお勧めです。料金は若干高くなりますが、VIPバスでも約1,500円で、日本の感覚でいえばコストパフォーマンスは良いといえるでしょう。
ジャウメイに到着するまでの間、バスは休憩のため何度か停車します。休憩所にはレストランやおみやげ屋さんなどがあり、とても賑やかです。
【写真2】休憩所の風景
(出典:文中掲載の写真は、一部記載のあるものを除きすべて筆者撮影)
ヤンゴンを夕方ごろに出発すると、ジャウメイには翌日の早朝につきます。ジャウメイの早朝はヤンゴンと違って寒く、上着の用意が必要でしょう。
独特なマーケットの風景
それでは街の中の風景について紹介していきましょう。
ジャウメイには多くの民族が暮らしており、それぞれが独自の文化や言語をもっていることから、特に街のマーケットでは、さまざまな少数民族、言語、物産が入り混じっていて、ヤンゴンなどの大都市では見かけない風景が広がっています。
またシャン州ならではの食べ物、生活用品まで揃っており、ここに来れば必要なものはほぼ手に入ります。大都市にあるようなショッピングモールとは違って、お店の人と話しながら値段交渉するなど、昔ながらの買い物を十分に楽しむことができるのが特徴です。【写真3】の左上のようなシャン州ならではのシャンヌードル、朝食やおやつ感覚で食べる豆腐天ぷらなどもあります。さらに、家電製品、腕時計や携帯端末などを一緒に販売している小さなショップもたくさんあり、種類こそ少ないものの、ジャウメイのような小さな町では比較的満足できる品揃えです。
長年離れていても、ここに戻れば幼少時代の記憶が蘇ります。
ジャウメイでの移動手段
大都市とは異なり、ここではタクシーやバスなどがなく、街中での移動は基本的に自家用車、多くの場合はバイクか自転車を利用します。近距離の移動なら徒歩も珍しくありません。
私がここで生活していた頃は自転車での移動がほとんどでした。近年経済発展に伴い、人々の生活が豊かになり、自転車に代わってバイクと車の量が格段に増えています。近距離移動にはバイクが主に使われており、中国製のバイクが一番多く走っています。価格が安いのが人気の理由で、一家に一台以上あるのが当たり前になっています。
ジャウメイの通信事情
今回久しぶりに帰って一番驚いたのは、通信環境が劇的に改善されたことです。
町の至るところにOPPOやVivoなど中国製スマートフォン広告が掲げられています。端末を販売している店もあちらこちらで見かけます。携帯端末は約13,000円からという低価格帯で販売されており、この値段設定が携帯端末の普及を一気に推し進めたのだと思います。
通信費は1GBあたり100円で、日本とほぼ同水準で割高ですが、従量課金制なので使い方次第で抑えることが可能です。場所によって通信速度が遅くなることはありますが、通話をしたり、インターネットアクセスしたり、手軽に利用できるようになったため、とても便利です。
ミャンマーでは、Telenor とOoredooのような外国の通信事業者が両社合わせて約52%のシェアを占めています(InfoCom T&S World Data Book Vol.46を参照)。アプリケーションをスマートフォンにインストールして、そこから通信容量を追加できます。また会社によっては、定期的に追加の通信容量が抽選で当たるキャンペーンなどを実施しているところもあり、通信会社間の顧客争奪戦を垣間見ることができます。
余談になりますが、ミャンマーではパソコンの普及率が非常に低いので、スマートフォンを使った情報発信や収集が中心となっています。7年前にはジャウメイはもちろんのこと、大都市のヤンゴンでも、人々がスマートフォンに夢中になる風景を見かけることはほとんどなかったため、スマートフォンの著しい普及は、町の変化を一番実感させるものでもありました。
おわりに
今回の滞在期間は2泊3日と短いものでしたが、幼馴染とジャウメイ近くの町、ティボー(Thibaw)へと遊びに行くこともできました。ティボーはジャウメイから車で1時間程度で気軽に行けるローカルな観光地で、景色が良く、落ち着いていて、穏やかな気持ちにさせてくれます。この日は幼馴染と遊び回りながら懐かしい思い出話に花を咲かせ、あっという間に日が暮れてしまい、次回会う時のプランを立てつつ、惜しみながら帰り道につきました。
今回の帰省で特に感じたのは、ミャンマーでは新しいものと古いものが入り混じりながら、社会が速いスピードで発展していることです。その中でチャンスをうまく掴めた人は多くの富を手にすることができ、豊かな人はさらに豊かになっていきます。一方、それによって貧富の格差がさらに広がっていく課題も感じました。それでもミャンマー人の人間味のある温かいところは、昔もいまも変わりません。これだけは、いつまでもなくならないでいて欲しいと切望しています。
※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。
情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。
調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。
ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら関連キーワード
EI THANDAR WINの記事
関連記事
ITトレンド全般 年月別レポート一覧
メンバーズレター
会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。
ランキング
- 最新
- 週間
- 月間
- 総合