2015.3.30 IoT 法制度 InfoCom T&S World Trend Report

IoT時代に求められる通信インフラ/プラットフォーム

あらゆるものがインターネットにつながる「IoT(モノのインターネット)」時代が目前に迫っています。スマートフォンやPC、サーバーなどのIT関連機器に加えて、テレビやオーディオプレーヤー、デジタルカメラ、ビデオカメラなどの情報家電だけでなく、エアコン、照明器具、調理機器などあらゆる家電製品・健康器具など、さらに自動車や人体、ビル・工場等の施設、農地をはじめ道路・トンネル・橋などに取り付けたセンサー類が接続対象となります。インターネットへの接続デバイス数は急拡大していて、例えば、Cisco社の発表によると、2010年では125億個(人口1人当り1.84個)なのが、2015年には250億個(1人当り3.47個)、2020年には500億個(1人当り6.58個)と5年毎に2倍になると予測されています。


このように接続デバイス数が急増している要因には、(1)モバイルネットワークの普及と (2)クラウドサービスの拡大があげられます。特に、最近では人と人とを接続するH2H (Human to Human)や人と機械・サービスを接続するM2H (Machine to Human)に加えて、機械と機械を接続するM2M (Machine to Machine)が急拡大してインターネット上で混在しているのが特徴となっています。こうしたインターネット上の変化、即ちIoT時代の到来の結果、モバイル通信インフラやサービスプロバイダーのプラットフォームなどネットワークにも新しい変化が求められています。接続デバイス数は機械対機械となることで、人口数の制約から離れてサービスに応じて急拡大していきます。IPネットワーク機能を搭載した「モノ」がローカルネットワークを介して通信インフラに接続され、データセンターとの間でクラウドサービスを成り立たせることになります。IoTによって新たにネットワークに接続される「モノ」が扱うデータは、一部を除いてほとんどが小さなデータで低速(ナローバンド)通信で十分です。さらに電源を持たないモノに通信機能を持たせる場合は電池交換が伴いますので低消費電力の通信手段が必要になります。


またIoTは離れたモノの状態を知り、離れたモノを操作することだけでなく、接続されたモノから得られるデータの収集・解析・評価を行って新たなサービス構築に繋げる、いわゆるビッグデータサービスの源泉を提供することになります。IoTの場合、接続する「モノ」の数が非常に多くなるので同一エリア内にある多数のノード接続に対応できる無線技術が必要となり、狭帯域(ナローバンド)無線で使用帯域を小さくして輻輳を避ける工夫が求められます。当然、低消費電力で稼働する無線技術が条件です。こうしたIoTに適した無線通信規格(方式)にIEEE802.15.4があり、加えて、多数のモノの個別識別のために、例えばIPv6を用いた6LoWPAN (IPv6 Over Low Power Wireless Area Networks)という通信プロトコルが存在します。


一方、IoTのデータは多数であるものの小さいパケット通信でARPUが低いので低コストのネットワーク構築が要求されるし、音声や人が介在するデータ通信とは違ってトラフィックの集中が非規則的で平準化されず予測が難しいものです。従って、通信事業者はIoTの特性に合った通信インフラの提供が求められていますが、まだネットワークの構築や運用面で現実のものとはなっていません。通信インフラ側では、M2Mの取り組みでは店舗に設置された防犯カメラなどが生み出す動画情報の接続・収集に苦労しているのが実態ではないかと思われます。ケースは少なくてもデータ量が膨大となるIoTへの対応が通信ネットワークとしては先決の課題となります。このように非規則的で予測が難しい多数で少量のデータ通信と膨大なデータ量の動画通信とが混在する新しい時代のIoTへの対策として、狭帯域(ナローバンド)ネットワークの構築とネットワーク自体に可変性を付加して柔軟性を高めるSDN(ソフトウェア・デファインド・ネットワーク)の活用が是非必要となります。低コストのネットワーク構築と急激な情報量の増加への対応が必須になるからです。また、細やかな輻輳制御設定による優先制御の自動化や接続デバイスやそのトラフィックの急増減にも可変的に自動的に最適化できることが重要です。従来の人が介在するサービスに準拠した通信インフラとは違うIoT時代への適応・拡充が期待されます。ネットワークのなかに自動的に最適化する機能を持たせることこそ、これからのネットワークイノベーションの筋道だと確信しています。


ネットワークアーキテクチャーの上からもコアネットワークとIPネットワーク機能搭載の接続デバイスとの間に立つローカルエリアネットワークの存在も見逃すことはできません。サービスプロバイダーが提供するプラットフォームの役割に期待が集まります。接続デバイスから送られる情報に対するインテリジェンス機能や接続回線の自動制御機能を確保しておく必要があるからです。通信インフラで狭帯域(ナローバンド)ネットワークの構築となると現在の通信事業者の中の設備建設・運用の多角化でよいのか、それとも別主体がよいのかは必ずしも明確な判断基準はありません。しかし、SIMチップがモバイル回線を選択したり、複数のMNOをまとめて事業化するMVNEが現実化しつつある現在、IoTというこれまでと違うネットワーク環境に適応するためには、現在の通信インフラを運営する既存の通信事業者も大きな変化を遂げる必要があることは間違いありません。ネットワークが接続デバイスをコントロールするだけでなく、反対に接続デバイスもネットワークを選択しコントロールすることになりますので、新しい役割(イネーブラー)が必要になります。


最後に、IoTに適合した電波の活用方法や周波数免許のあり方(免許不要帯域を含めて)、現行の電波利用料制度の見直しなど法制度や規制面にも課題がありますので検討が急がれます。

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